エリ巻恐竜  ジラース




『ウルトラマン』 第10話
「謎の恐竜基地」

画像にマウスを載せると
 別の一面が見られます。
 画像をクリックすると 
 【ジラース on SketchBook】 
 に移動します。

『HGウルトラマン』シリーズ PART.40
復活のバルタン星人編
バンダイ 2004年


 「ゴジラにエリ巻きを付けただけ」。詰まるところそれは、「エリ巻きを取ってしまえば“唯の”(と言うのも変だが)ゴジラである」ということ。実際劇中のラスト、ウルトラマンによって自慢のエリ巻きを毟り取られてしまったジラースに、昭和往時の怪獣少年らは唖然とさせられたことであろう。着ぐるみの流用が斯様にもあからさまであることと、そしてその母体があの怪獣王・ゴジラであったということ。こういったあざとさが、人気怪獣とはまた違った意味合いで、ジラースの知名度を押し上げた。よってHGシリーズ10年目にして漸うの初リリースは、正直「勿体振り」と言ってもいいくらいだ。さてその遅れてきた“エリ巻ゴジラ”だが。左足を踏み出し身体を捻りつ、斜に構えたような綾と、そして「ニッ」と笑ったような表情は、如何にも狡猾なジラース(ゴジラ)らしい。確かな造型力が描く稜線は、演者・中島春雄が醸すニュアンスさえも顕現させた、まさにジラースそのもののフォルムであり、手応えある量感と併わせて申し分無い。が、ゴジラ由来である肌理にあっては、どうにもザラつきに不足感が残る。茫としたモールディングの浅さは、生けるものとしての息衝きを大いに殺いでおり、例えばサケを咥えたヒグマの置き物など、お土産的な木彫像を髣髴とさせなくもない。全体的なカッコ良さの割りに何処かしら怏々とするのは、このようなテクスチャーの緩さが故と思しき。また渋さを狙った彩色については、抑えた黄色の発色が厭味であり、単に汚らしい黄土色に堕してしまっている。200円のカプセル・トイに対して贅沢と言ってしまえばそれまでだが、可惜、折角の造型をもっと“活かす”方策は無かったものか。尚、成型の都合であろうとも、着脱可能なエリ巻きには素直に愉悦す可し。同スケールのゴメスやゴジラと、並べて愛でる一興も有り。

『HGウルトラマン』シリーズ PART.40 復活のバルタン星人編_ジラース_前・後

『HGウルトラマン』シリーズ PART.40 復活のバルタン星人編_ジラース_側・ゴジラ&ゴメスと

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ 3
バンダイ 2003年


 北山湖より上陸し、湖畔に佇むジラース。動きに乏しい凡庸なポージングだが、元々がかの怪獣王であるだけに、このような泰然自若とした構えも実に好く似合う。嵌め込むだけのエリ巻きは容易に取り外すことが可能で、むず痒いファン心理へ差し伸べた孫の手が嬉しい。これをゴジラ物として考慮した場合、あの“ゴジラ造型家”・酒井ゆうじの手による別シリーズ、即ち『ゴジラ名鑑』や『ゴジラ全集』における数々のフィギュア群に比して、決して引けを取るものではない。まさに凛乎たる“エリ巻きゴジラ”の威風だ。内側へ反り捲れたエリ巻きの質感の見事。また手に持ち強く押さえれば、指に痕残す体表のザラつきが心地よい。愛すべき怪獣が遺し給う聖なる刻印...と言ったら大袈裟か。ともあれテクスチャーの確かな手応えは、HGには無かったアプローチだ。そして何は置いてもこのジラースが傑出している点は、豊潤な色使いによる艶やかな塗装である。ジラース色は、「黒いゴジラの随所に黄色」という単純なものでは決してない。過剰な結節の凹凸で鬩ぎ合う肌理には、ほんのり緑色が滲み出ており、恰もそれは苔生しを煥発させる。そのような繊細な風合いを、あろうことかデスクトップ・フィギュアについて実践してみせた気骨には敬服。頭頂部における黄色と水色の彩色が、些か紋様図柄のようであるが、それでもこのジラース色への果敢な挑戦に“名鑑魂”を見る。冷厳にそして悠揚な無動作が緊張感を孕むとともに、身体髪膚覆う苔茵の如きは、「さっきまで水中、今は陸」といったような先刻までの水棲を偲ばせる臨場感を発現。糅てて加えてその苔生しは、幾多の風雪とともにあった永きに亘る月日を達弁に物語り、遥か悠久の時の向こうに息衝いた古代の住人の御姿を完遂させる。怪獣に寄せる愛情がひとしおでなければ、どうして経過した時節をも顕現させることが出来ようか。畏るべし名鑑。仄かに緑色を発光する湖底の主は、まさに苔衣を纏った世捨て僧侶。その汀での仁王立ちをとくと御覧じろう。

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ 3_ジラース_前・後

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ 3_ジラース_側・伏角

『ウルトラ怪獣名鑑シリーズEX ウルトラパノラマファイト』 ラウンド1_ジラース_側・バラ

『ウルトラ怪獣名鑑シリーズEX ウルトラパノラマファイト』 ラウンド1_ジラース_アップ・アップ

『ウルトラ怪獣名鑑シリーズEX
ウルトラパノラマファイト』 ラウンド1
バンダイ 2006年


 快作・“名鑑ジラース”から3年。名鑑シリーズにおけるジラースへの、飽くなき追及は続く。此度は、昭和当時の児童書などに掲載された“幻の怪獣対決”テイスト。意趣としては同じゴジラを母体とする着ぐるみ流用怪獣同士、即ちジラースゴメスとの激突で、冠名に「相似形正統怪獣決戦!!」などと謳われている。名鑑同様またもや舞台は北山湖湖畔で、台座上に配われたのはリトラの卵と、そして船上科特隊員の不遇。ゴメスを衝き転ばすジラースの所作を単体で見れば、まるで変身ヒーローの決めポーズのようである。だがしかし如何にこれが“架空の”ジラースであるにせよ、前述したとおりに名鑑シリーズによる怪獣偏愛は健在だ。“上出来”だった名鑑版ジラースの、更なる躍進を試みている。夥しい結節から成る“ゴジラ肌理”と、苔生しを髣髴とさせる“ジラース色”にあっては、これはもうお手の物と言ったところ。爛熟の域である。殊に黄色と緑色の“まぶし”は絶妙な塩梅で、躍動するジラースの体躯に映えること映えること。朱も鮮烈な口腔に精緻な歯列が立ち居並び、またその瞳は心なしか滑沢に潤んでいるようだ。左腋にゴメスの尻尾を抱え込んだ、組み合わせの妙味にも刮目。劇中では有り得なかったジラースではあるが、これが名鑑版に比肩する上作であることは厘毛も争われない。名鑑版はバイス、そしてこのパノラマ版はエクスプラスと、それぞれ異なった原型製作によるアプローチの流儀を比して愉しむ可し。

『HGソフビ道 ウルトラマン』
シリーズ 其ノ四
バンダイ 2002年


 本シリーズ同弾アソートのガボラ同様、一発型抜きを前提とした胴体との一体成型によって、ご自慢のエリ巻きが斯様な肉厚のザマ。それでもガボラよりは許容の範囲内、左程気疎ましいものでもない。それどころかこの手のミニサイズ・ソフビ人形としては、佳作の部類に入る出来映えと言えるだろう。昭和ゴジラにあって“カエル顔”などと謳われ、人懐っこい所作で人気を博した『怪獣大戦争』(1965年)版のゴジラ。その愛らしさとともに不敵さを継承した面構えは、やや左側に傾いたポージングの綾と相俟って神色自若、エリ巻恐竜を傍若無人ならしめている。体表を埋め尽くす結節のテクスチャー、反り捲れたエリ巻きのニュアンス、健気にも自己主張する爪のひとつびとつなどなど。一切手を抜かない製作姿勢の結実を矯めつ眇めつ、遍く享受出来る幸甚の到り。また暗緑色の成型色に要所要所の黄色が冴え渡り、背ビレの外郭やエリ巻き裏側の付け根について逐一置かれたイエローの、何ともいちいち小憎らしいことか。そして、白・朱・黒による眼球の三色構造を以って画竜点睛の為果せ、湖の主は拍動を始めるのである。ミニサイズ・ソフビ人形にあって、ソツの無さが傑出した本シリーズ。このジラースに到り、いよいよそれは円熟の域に到達したと言えるだろう。兎に角、掌に乗せた際の愛狂おしさと来たら!尚、中央の背ビレ一葉が無意味に可動する間着造作はご愛嬌。

『HGソフビ道 ウルトラマン』 シリーズ 其ノ四_ジラース_前・後

『HGソフビ道 ウルトラマン』 シリーズ 其ノ四_ジラース_側・ガボラと

600円ソフビ 『ウルトラ怪獣』シリーズ
バンダイ 1998年


 シリーズNo.(98年当時)を“0-SP”と銘打たれたジラース。元々は1995年に発売された『ウルトラバトルゾーン 怪獣大決戦場』(¥9800)なる玩具に、ウルトラマン(ポーズ付き)や科学特捜隊基地などともに同梱されたソフビ人形で、それをリペイントし単体販売したものだ。何でも一般小売店アソート出荷という流通形態であったため、地方によっては入手困難だったとか。95年版のものはライト・グリーン塗装であったが、98年版ではそれより暗めに彩色が変更された。ソフビ人形にあっては“エリ巻き”などという難関に果敢にもアタック!...が、やはり頭部との一体成型であるために、不恰好な肉厚に。とは言え、「エリ巻き付きゴジラ」が発散する愛らしさはご健勝。ソフビ故に丸みを帯びた造型の味わい深さと、またジラースというキャラクター選択のあざとさを甘受して言祝ぐ可し。

600円ソフビ 『ウルトラ怪獣』シリーズ_ジラース

食玩 詳細失念_ジラースとウルトラマン

食玩 詳細失念
バンダイ


 ウルトラマンと対でアソートされたと記憶。歯列まで赤一色で彩色された口腔内が、矢鱈と生々しい。あられもないのはご覧のとおり。稚拙な造りであると、断じてしまえば最早それまで。しかしそれはそこ、己が興趣を以って向き合えば、これが俄然情味を帯びて来るものだから、いやはや怪獣玩具は分からない...なんて、決して大袈裟な御託などではない。実際このジラースの居住まいはキュートであり、粗雑だが兎にも角にも置かれたイエローのアクセントが心憎い。また怖めず臆せず恬とした身構え、或いはそれを意図とした造型や、はかなげだがそれでも確かに刻彫されたゴジラ譲りの体表テクスチャーなど。ディテールのそこここからは、「チープながらも何とか楽しんで貰おう」とした、玩具製作者にあって基本的な気負いの程が聞こえて来よう。無論そういった意気込みの淵源は、取りも直さず発信者自身が擁する“怪獣愛”である。何しろあの超人気者、レッドキングゼットンを出し抜いて、バルタン星人と並んでわざわざラインナップされたエリ巻き恐竜であるのだから。

『特撮ヒーローズ』シリーズ 「ウルトラマン」
プレックス 2006年、2009年(再販)


 “殺人的愛くるしさ”。頭部に嵩偏重を置き、兎に角「顔が命」。そうした統一概念によって生み出された、SD版ジラース。ほぼ2頭身、いや襟巻きを頭部の一部とするならば1.5頭身(?)か。造型における写実と脚色の絶妙な匙加減、決して厭味にならない頭部と身体の比率バランス。この妙!先細りする手の先の爪、それらひとつびとつの何たる健気。左方へ傾げた首の嬌態は最早反則、あざといこと狡すからいこと。朱を含んだ虹彩が凛乎、半開きの口腔から殊勝に自己主張している歯列。体色は碧味に乏しいマウス・グレーだが、額や襟巻きに配されたイエローとのハーモニィーによって、仄かな苔色の錯視へと誘われよう。余剰な穿鑿は不要。愛玩動物の域にまで達したこの媚態・諂巧を前にして、心の締まりを亡失させ、無抵抗に蕩けてみようではないか。

『特撮ヒーローズ』シリーズ 「ウルトラマン」_ジラース_前・後

『特撮ヒーローズ』シリーズ 「ウルトラマン」_ジラース_側・ゴメスと


↑ 画像にマウスを載せると別の一面が見られます。↑
 画像をクリックすると
           ★【ジラース on SketchBook】
                          に移動します。。


スケッチブックを
覘く»»»







つわぶきの葉

おもちゃ箱を
ひっくりかえす
      »»»






つわぶきの花










inserted by FC2 system