ウラン怪獣  ガボラ




『ウルトラマン』 第9話
「電光石火作戦」

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『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ ウルトラマン&ウルトラセブン 1st. SEASON EPISODES_ガボラ_前・側

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ ウルトラマン&ウルトラセブン 1st. SEASON EPISODES_ガボラ_側・伏角

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ
ウルトラマン&ウルトラセブン
1st. SEASON EPISODES
バンダイ 2004年

 怪獣が佇む“あの風景”。名鑑シリーズの趣向・真骨頂は、まさにその情景・場景・状景の切り取りにある。ただ地面を模した台座上に怪獣が乗っかっているだけで、異形が息衝く非現実的奇勝が完遂するというものでもない。そこにはその怪獣と因縁深い建造物や景観、また印象に残る瞬間が在って然るべきなのだ。そういった「怪獣フィギュア+外的要因」で数々のウルトラ名シーンを活写・発信し続けて来た本シリーズだがしかし、上記のような“あの光景”を見い出し難いエピソードに行き当たるのも当然避けられぬこと。ウルトラシリーズに登場する怪獣の全てが全て、絶勝の恩寵に与った訳ではないのだから。このガボラが登場した「電光石火作戦」などは、特に「これ」といった名場面に恵まれなかった作品として位置付けられよう。(無論だからと言って、本エピソードが凡庸であったと断ずるものではない) 後方に傾らかな山岳地帯を配した台座はまるで教材用模型のようで、極めて形式的な造作が顕著だ。題字さえ無ければ、ここに乗っかる怪獣が別にガボラでなくとも成り立ってしまうような汎用的仕様である。本編がそうなのだから致し方無しなのだが、欲を言えば、ガボラを誘導するハヤタのヘリコプターや吊り下げられたウラン入りカプセルなどの「外的要因」が欲しかったところ。たとえばの話し。とは言えフィギュア自体の出来は、造型・彩色ともにこの種の掌サイズのものとしてはこれ以上望むべくも無い。殊に顔の細工にあっては、ネロンガ譲りである“狂い牛”の如き強面・凶相が活き活きとしていることに刮目。目の表情表現や歯列の塗り分けなども丁寧で、画龍点晴の躍如を目の当たりにしているようだ。花弁のようにカッと開いた六葉のヒレの先端まで、造型者の魂が籠もっているようで緊張感に満ち溢れている。このような“~らしさ”は、怪獣フィギュアに肝要なオブスキュア性であり、その具現化に果敢にも挑んだ本シリーズ製作スタッフには敬意を惜しまない。まさに「デスクトップ・ジオラマ」の最高峰だ。しかし優れたフィギュアであるからこそ、「ガボラが居る」異観を完成させる“もうひとニュアンス”の欠如が惜しまれる。

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ
ウルトラマン&ウルトラセブン
1st. SEASON EPISODES
バンダイ 2004年

 上記名鑑シリーズによるガボラの別ヴァージョンで、所謂“ヒレ閉じ”版。フィギュアのボディ部と台座はそのままで、ヒレを閉じた頭部だけがノーマルのものと異なる仕様だ。よって出来如何についても、概ね上述通り。加筆すれば閉じたヒレの質感、シルバーに擦過のニュアンスを付すことで顕現させた「生物と無機物の挟間」感、その絶妙な塩梅であろう。「開く」ことの前提を、まるで否定するかのような閉塞感も劇中通りの印象だ。ガボラの醍醐味は六葉のヒレが「開く」ことにあり、閉じていた時とのギャップが発現する刹那こそが最大の見せ場でもあった。さながらプテラノドンなどの翼竜ないしモササウルスら海棲爬虫類の頭骨を喚起させる鋭角的な頭部が、恰も花弁のようにパッと開く意想外性。そしてそこに覗かせる狂い牛の如き形相。「あっ!」とさせられた昭和往時の記憶は、今だ鮮烈だ。“縫いぐるみ流用怪獣”を、ただでは終わらせようとしない成田亨の飽くなき創意工夫、その賜物である。怪獣図鑑などではヒレの開放状態を以ってのスチール掲載が無論主流で、それこそがガボラのスタンダード・定番であるというのが通底した認識だ。しかしながら本編ではこの“ヒレ閉じ”姿も長きに亘って登場するので、レア・アソートながらもこういった配慮は実に嬉しいところ、痒い処に何とやら。特に“ヒレ閉じ”の方に俄然食指赴いて止まぬ御同好の輩には。自分を含めて。

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ ウルトラマン&ウルトラセブン 1st. SEASON EPISODES_前・比較

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ ウルトラマン&ウルトラセブン 1st. SEASON EPISODES_側・伏角

『HGウルトラマン』シリーズ PART.29 電光石火作戦編_ガボラ_前・後

『HGウルトラマン』シリーズ PART.29
電光石火作戦編
バンダイ 2002年


 大怪獣の見せ処は、先ずは何を置いても桁外れな膂力を煥発させる巨躯である。そういった意味合いにおいてこのHGシリーズのガボラにあっては、四つん這いではなく、後肢二足立ちの前傾中腰仕立てにしたことが的を射たり、正解と言えるだろう。東宝のバラゴン由来の巨体は、身を起こさせることによってその量感を発揮する。どっしりと構えた体躯の安定感、そしてずっしりとした万鈞の手応えは圧巻だ。掌に乗せた時の充足感が、何とも嬉しい限りである。同弾にラインナップされたウルトラマンの痩身との対比を以って、この過重は更なる加圧を見せよう。“リアルバウト・シーン再現”の銘打ちが活きてくるというもの。フィギュア自体の造型・彩色については、この2年後に発売された名鑑シリーズに較べれば若干の見劣りは否めない。たとえば名鑑ではやってのけた口腔の穿ちが、それより大きいサイズのHGでは為されていない点など。そうは言っても、腹部と背面におけるスプレー塗装や赤ヒレに施された“汚し”など、随所に真摯な丁寧さが見て取れる。また右上部ヒレの突端が、心持ちやや後方へ反り返った綾は絶妙だ。勿論“狂い牛”の如き鬼気迫る顔つきも健在。決して重量感だけで見せるガボラ・フィギュアではないということを雄弁に物語っている。

『HGウルトラマン』シリーズ PART.29 電光石火作戦編_ガボラ_伏角・ウルトラマンと

『HGソフビ道 ウルトラマン』 シリーズ 其ノ四_ガボラ_前・後

『HGソフビ道 ウルトラマン』
シリーズ 其ノ四
バンダイ 2002年


 ソフビ仕様によるガボラにあっては、最大特徴の六枚ヒレにおける難点に先ず注視の目がゆく。箱入り販売形態故に「箱に収める」ことを前提とし、また頭部との一体成型やソフト・ビニールという材質上の理由なども相俟って、短めにそして肉厚の造型を余儀なくされてしまったのだろう。だがしかしこのようなヒレが、「閉じた」ときのことを想定していただきたい。この短さでは頭部を覆うことすらままならず、そして斯様な肉厚ではガボラ自身を圧殺するであろう。真に以って喰えないヒレである。こんなにもガボラを否定するかの如きヒレであっても、それでも尚これをガボラ為らしめているのは、卓越したオリジナル・デザインに依る処が大きい。さて問題点のヒレを除けば、造型と彩色は良好な出来映えだ。下肢の付け根部位における縫いぐるみ特有の弛み・捩れなどは良い塩梅で、造型者のセンスが光る。そして顔の造作に到ってはまさしくガボラ、劇中さながらの傍若無人振りをそこに見ることができよう。殊に目や口腔における塗装表現は細やかで、背面のヒダ塗装とともに好感が持てる実直さだ。HG版と次々項のSDM版を併わせて、「2002年はガボラ・フィギュアの当たり年」...そう言ったら過ぎるやもしれぬが。

『HGソフビ道 ウルトラマン』 シリーズ 其ノ四_ガボラ_仰角・伏角

『特撮ヒーローズ』シリーズ 「ウルトラマン」_ガボラ_前・後(比較)


『特撮ヒーローズ』シリーズ 「ウルトラマン」
プレックス 2006年、2009年(再販)


 実るほど頭を垂れる稲穂かな。頭部の量感偏重を以って、統一概念とした本シリーズ。基本2頭身だが、このガボラのようにヒレの嵩張るものについては、それこそ1.5頭身。SD形態であっても、兎に角顔面の迫力で押しまくる。矮躯に歪形させながら、しかしこの造り込みはどうだろうか!拘泥わり抜いた顔面の造作は、リアリティにデフォルメのスパイスが効き、劇中さながらの無垢けき狂暴さが愛くるしい程だ。下肢の付け根部位における縫いぐるみの余剰弛緩、体表の煉瓦パターンなど、重箱の隅にまで行き届いた立ち入り・干渉は、流石本シリーズの真骨頂。難を言えば配色か。全身に塗装された焦げ茶は、“ガボラ色”としては濃過ぎ。またヒレ内外における朱と象牙色の截然は、あまりにも形式的で生命感を大いに殺ぐ。それがガボラの最大表徴であるが為に、尚更残念だ。口腔の「赤」と歯列の「白」の鬩ぎ合い、これについては清々しい程であり、彩色面唯一の救いであろう。

『特撮ヒーローズ』シリーズ 「ウルトラマン」_ガボラ_側・伏角

『SDMエスディーミュージアム ウルトラマン』 シリーズ 3_ガボラ_前・後

『SDMエスディーミュージアム
ウルトラマン』 シリーズ 3
バンダイ 2002年


 SDスタイルながら、洗練されたデフォルメのセンスがギラリ!第1話のベムラーから順当にマン怪獣のラインナップをこなしてきた本シリーズ、“あの”スフランでさえ欠くことは無かったが、第9話のガボラを以って終了してしまった。実に惜しまれるところだ。さてその有終の美を飾るガボラ。ふてぶてしくも何処か憎めない愛嬌顔の顕現や、縫いぐるみのシワ表現など、“SD”だとか“リアル系”だとか、最早そういった枠などは超越している。作り手の“怪獣愛”を感じる入魂の作、いやシリーズだ。過剰に丸めたガボラの背中を愛で言祝ぐべし!

『SDMエスディーミュージアム ウルトラマン』 シリーズ 3_ガボラ_側・アソート

『ウルトラマン Bot-Biz』 PART.1_ガボラ_アソート・アップ


『ウルトラマン Bot-Biz』 PART.1
ラナ 2002年


 ボトルキャップの上に立つ何とも無様なガボラ。不出来な粘土細工ないし泥人形と言ったところか。六葉のヒレを一応は付けているものの、“一応”からの域を出るものではない。ガボラの特徴を有し無論似せて作られながらも、ガボラには程遠い模像。造型・彩色云々より、先ず「怪獣を作ろう」という根っこの処がなってない。ラインナップ選定の英断、その果敢さは買うが、技術力と愛の欠如は如何ともし難い。ボトルキャップ・フィギュア・バブルの遺品。


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