前傾姿勢は“モスゴジ”のシルエットを踏まえた造型だ。表面にゴメスを顕現させていても、ゴジラの雄姿をそこに見る。鋭利に尖った角・牙・爪の鈍色の輝きはもはや伝統工芸品の域、特筆に値しよう。体表のウロコも一枚一枚が隆起していて、ゴジラを基盤としたテクスチャーも隅々まで手を抜いていない。細部まで緻密に拘った丁寧な造りが醸し出すのは、劇中さながらの「迫力」である。リアルタイプのソフビでは、これ以上ない出来だ。
スケール・バランスの比重を頭部に偏らせた、SDスタイルによるゴメス。塗装は放映に肖って白黒画面風。本シリーズにおけるデフォルメの解釈とセンスは比倫を絶しており、“SD”という枠枷であるにも関わらず、全貌を描き出す稜線がゴメスというキャラクターを決定付けている上に、剰え着ぐるみ中の操演者の体型さえも煥発させるのだから、その造型力の異能さにはいやはや舌を巻く。勿論基盤を成す“モスゴジ”の威容も御清勝。「墨入れ」のようなこの手の短絡的白黒彩色には正直閉口するが、滲み込んだその墨が、体表上の鱗やモールドの精緻さを却って浮き彫りにしているので、この場合は「有り」か。そして角と牙の、この艶やかさと来たら!