磁力怪獣  アントラー




『ウルトラマン』 第7話
「バラージの青い石」



塗装済み完成品スタチュー
『The collection ULTRA』シリーズ #3
ART OF WAR 2001年



 バラージの町の城壁が台座に配された、それこそ「置物」としての嵩が見応えのある力作だ。迫力ある大アゴや独特なフォルムを持つ頭部の造型、また砂漠に棲まうものとしての体表のザラつきや四肢が纏う節々の一枚一枚まで、気迫の籠もった精緻な造型は見事と言うほかない。さすがは怪獣造型家、茨木彰氏の洗練された仕事振りである。しかしだからこそ、薄いグリーンとイエローの2色によって構成された、大胆な2分割彩色が何とも惜しまれるところだ。ピリッと引き締まったこの造型に対して、あまりにも単純過ぎる塗装が勿体ない。特徴的なフォルムとともに、複雑な色合いもアントラーの持ち味であり、よって斯様な色味の乏しさは、その魅力を大いに殺ぐ結果となっている。だがそれを差し引いても、完成品としてのアントラー・フィギュアの中では、これが最高峰の部類に入ることは間違いない。折れてしまいそうな大顎や触角など、置物としての“華奢さ”もこのフィギュアの味である。

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ポリストーン製スタチュー 塗装済み完成品
浪漫堂 1997年

 アントラーの色は不思議だ。砂漠に棲息する生物として乾いた体色を呈しながらも、甲虫特有のキチン質さながらに黒い光沢さえ放っている。「○○色」と、簡単には言い得ない。したがってアントラーのフィギュア造型において、その特徴的なフォルムを活かすも殺すも、この複雑な色合いの妙味にかかるところが大きい。さてこのスタチューは、大胆にもアントラーが見せる「黒」の方に重きを置いた彩色でアプローチを試みている。昭和当時に発売されていた5円引きブロマイド、それに人工着色されていた黒色のイメージに近い。だがこの「黒」こそが功を奏す結果となっており、これによって昆虫型怪獣のカッコいいフォルムがぐっと引き締まって活きてくると言えよう。背中の青い斑紋は無いものの、アントラーという怪獣が持つ形態の味わい深さを、改めて思い知らされるフィギュアである。


『HGウルトラマン』シリーズ PART.13
新たなる光編
バンダイ 1998年


 HGシリーズの傑作である。発売から10年以上を経ているが、現在のHGシリーズに決してひけをとるものではない。造型もさることながら、刮目はその彩色。こだわっただけあって、砂を被ったような色合いの妙味は、“アントラー色”として完璧だ。テイク5でやっと量産に漕ぎ着けたというが、その執念には感服する。HGが盛り上がってきた時期の発売であり、このアントラーは往時の沸騰振りを物語る達弁者となろう。造型が抜群に良いので、また違った彩色によるリペイントを望むものだ。


『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ 1
バンダイ 2002年



 頭でっかちなバランスが少々気になるが、しっかりした造型によってアントラー特有のフォルムは健在だ。彩色もHGシリーズ同様に、砂漠に棲息する生物が呈す乾いた質感が出ており、尚且つ昆虫さながらの光沢さえ放っている。名鑑シリーズ1発目にかけた意気込みは、この深い色合いからも窺えよう。また背中には、HGでは見られなかった青い斑紋が再現されている。台座に配されたバラージの城壁の一部ともども、納得と満足ゆく仕上がりだ。


『ウルトラ怪獣名鑑シリーズEX
ウルトラパノラマファイト』 ラウンド1
バンダイ 2006年



 名鑑シリーズの脱線企画で、昭和当時に児童書などで繰り広げられた夢の対決を立体化したもの。「壮絶昆虫型怪獣決戦!!」と題して、アントラーと単にセミ顔のバルタン星人を戦わせるのは少々強引。だがこのシリーズ、フィギュアの出来の良さには俄然刮目だ。黒色の光沢と砂を被ったニュアンスは、“お遊び企画”のひと言では済まされない情熱の傾けようである。からこそ、砂に埋まってしまった下半身が惜しまれよう。このクオリティで全身像を望むものだ。


『HGウルトラマン イマジネイション』
シリーズ Part.2
バンダイ 2003年



 もう殆んど昆虫そのものとして造形された6本足のアントラーだが、オリジナルのフォルムを遵守したイマジネイションへの飛翔は見事である。卓抜された解釈のセンスによって生み出された、素晴らしいアントラーだ。背面の青みがかった黒色の鈍の輝きには、甲虫が放つ眩惑の光さえ宿っている。“ノアの神像”と神官チャータムを神殿の背後から襲う意趣だが、そこから離してアントラーを単品としても飾れる配慮が嬉しい。ウルトラ怪獣の次なる新解釈へと、期待も膨らむアントラーだ。


『プレイヒーローモンスター
ウルトラマンモンスターズ』シリーズ
2nd battle
バンダイ 2007年


 2007年5月。データカードダス・システムのアーケードゲーム『大怪獣バトル ULTRA MONSTERS』が稼働。これを機にウルトラ怪獣玩具界は俄かに活況する。ミニサイズのソフトビニール人形が2体同梱された人気玩菓シリーズ・『プレイヒーローVS ウルトラマン対決セット』も、「何れかのウルトラヒーローと怪獣を組み合わせる」在来の枠組みが見直され、結句バンダイのキャンディ・トイ事業部は別途シリーズを新興展開。10種のラインナップ全てが単体の怪獣であるという、遠慮会釈無い蛮行に打って出る事に。以上が新シリーズ『プレイヒーローモンスター ウルトラマンモンスターズ』、俗称“ウルモン”の幕開けであった。不意に降って湧いた怪獣ラッシュに、ファンたちは欣喜沸騰...。
 で、シリーズ第2弾。アントラーの登場である。これより5年遡った2002年。ほぼ同サイズで、デフォルマシオンの方向量も似たり寄ったりな商品が、同じバンダイの、しかしベンダー事業部から発売された。その名も「ソフビ道」シリーズ。(当頁2項目下参照) 彩色については趣きを異にする「ソフビ道」と「ウルモン」だが、瞥見だけで造型面の差違をあれやこれや挙げ連ねるには、ちょっとした労苦が伴う。早い話、変わり栄えの何と少ない事か...。とは言え日本を代表する玩具メーカーとしての5年は、無為無策に過ぎ去った訳ではない。矯めつ眇めつすれば、先行者との近似性を突き崩す日進月歩の痕跡が、自ずと認められるだろう。
 先ずは“あり地獄怪獣”の表徴である左右一対の大顎、つまり“antler”、の延長。寸詰まり甚だしき大顎の造型に、大いに不満が残った「ソフビ道」版。だがやや改善された感のある此度は、僅かながらの伸長が為されている。それでもまだほんの心持ち程度、“あり地獄怪獣”の面目躍如にはとんと及ばぬレヴェルだ。依然肉厚は変わらないし...。どうかすると箱篋による包装呪縛を突き破ってしまうよな、規格外のレングス。他の造作を殺そうとも、そういった誇らしい大顎が、アントラーの人形には是が非でも欲しいところ。
 次に最も判別し難い全体像の異同、即ちシルエットの相違点について。毫末ではあるが、「ウルモン」版の頭部フォルムは、「ソフビ道」のそれより前後に張り出した格好で、ひと回り大きく造形されている。遵って頭蓋部位は末端に向かってカウル状に扁平し、まさにカブトムシの如き風合い。兎の毛ながら双方の較差は、サイドヴューにて聢と発露する。尚この鉢のエクステンドに伴い、前傾姿勢並びにハッチバックの度合いも、幾許か増した印象だ。くっと曲折させた肘・膝が、又候活きて来るというもの。極微な傾斜であっても、兎にも角にも「猫背」こそはアントラーを決定付ける肝、模像にとって大切なオブスキュア性である。よってまだまだ寸足らず、或いは過ぎる程が丁度良いのかも知れない。
 更に細かなトリムにまで突っ込めば、両上肢のサイドをそれぞれ縦に走る一条の鋸歯、ギザギザ。昆虫類の環節構造を髣髴とさせる肢の装飾は、子どもだって絵に描くくらいで、“虫らしさ”を纏わせるには恰好の記号だ。尤も斯かるディテール、本編を観てもその存在は茫としており、「果たして本當に附帯している物なのか?」と、疑念は払拭されない。(リアル造型を謳うフィギュアでも、オミットしている場合が多い) しかしそうは言っても、このソフビ人形を極力“甲虫”怪獣ならしめようとした姿勢は満更でもなく、寧ろ律儀な配慮が何とも微笑ましいではないか!作り手の愛を感じる。
 以上造型について、先行商品「ソフビ道」より、地味ではあるものの、その僅差をして「格段」と評して何ら障り無い進歩を遂げた「ウルモン」だが。ひとつ気懸かりな点を挙げるとなると、煤けた焦げ茶色によるカラーリングという事になる。光沢を殺したこのスモーキーなトープは、着彩ではなく成型色だ。まだアントラーの体色としてギリギリ乗っかっているが、動もすれば厭味に繋がりかねない危うさを孕む。砂埃を被った積もりの色彩設計はしかし、胸腹部のイエローと相俟って汚濁、「砂塵」よりも「泥土」のイメージに近い。成る程色彩再現において、そう易々とは済まされない甲虫の表皮だ。キチン質特有の複雑な色合い、その調合・抽出の困難さは重々斟酌出来よう。にしても焦げ茶色は無いでしょ、焦げ茶色はぁ...。実は2年後、「何だ、やれば出来るじゃないか」という実践を、まざまざと見せ付けられるのである。以下次項目へ。↓


『プレイヒーローVS ウルトラマン対決セット』
シリーズ EX
ウルトラギャラクシー 大怪獣バトルNEO
バンダイ 2009年


 上掲「ウルトラモンスターズ」の物を、型はそのまま流用、カラーリングを大幅に変更し、ミニソフビ人形2体入りがお得な人気玩菓シリーズ、即ち「対決セット」に組み込んでの新発売。つまりは正味、リ・ペイント&再リリースという代物。
 そも「対決セット」は在来シリーズであり、これと商品概念を同じゅうした「ウルトラモンスターズ」(以下「ウルモン」と略称)は、派生的性格を帯びる後発品だ。遵ってこのアントラーの場合、発売順序を勘考すれば、金型転用における謂わば「親と子の逆転現象」とも捉えられるだろう。(因みにアントラーの“対決”相手として同梱されたのは、レイオニックバースト版の赤いゴモラ)
 2007年。アーケードゲームの人気沸騰に端を発し、同年テレビ番組化にまで到った『大怪獣バトル』。テレビシリーズの2作目『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEO』(2009年)には、いよいよアントラーが登場。本商品陣容への登傭は、無論番組に即する格好で配慮されたものだ。
 さて。既述どおり、同型から製品化され、換骨奪胎の関係にある両者。なれば比較ポイントは、畢竟するに着彩の差異に絞られよう。
 「ウルモン」版がダル・ブラウン系での彩色だったのに対し、此方「対決セット」版は装いも新たにインディゴ系でアプローチ。“あり地獄”怪獣の「砂を被った」イメージよりも、キチンの硬質感に肉薄しようとした試みである。先行者「ウルモン」版に配された焦げ茶色にあっては、正直厭味な印象は否めない。一方、鈍い光沢を宿す体色に留意し、何よりも“甲虫”怪獣としての玄妙さを重んじた「対決セット」版。軍配がどちらに上がるかは一目瞭然、言わずもがな、態々精査を俟つものでもないだろう。また四肢に噴かれたホワイトが暗色の中で効果的に発色、且つ全体像をグッと引き締める程合いに作用している。嘴にひと刷けされたピンクも、藍系の色合いに対して鮮烈に映え、高々がソフトビニール人形のクセしてやけに生々しい。斯様な色彩設計を以ってして、ミニソフト版アントラーの完遂としたい。

 

※ところで、テレビの『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEO』第4話に登場した個体として、一応は誂えられた当「対決セット」版アントラー。しかし型については、反復するが先行「ウルモン」版と同じ物だ。その「ウルモン」の発売は、アーケードゲームの方の『大怪獣バトル』に即応している。そしてゲーム上のCG画自体は、無論昭和の“オリジナル・アントラー”が基。よって「ウルモン」版(=ゲーム版)を、『ウルトラマン』で初出したアントラーと見做す事に、(仮令焦げ茶色に塗装されようとも)取り敢えずの体面上は問題無かろう。だが「対決セット」版(=TV『ウルトラギャラクシー~NEO』版)となると話は別、そうそう単純には済まされない。何故なら『ウルトラギャラクシー~NEO』で操演されたアントラーの着ぐるみが、『ウルトラマンマックス』(2005年放映)の為に新造された物の再使用であるからだ。どういう事か?『ウルトラマンマックス』出演の際、特にデザインを刷新した訳ではないものの、そこは時代の懸隔、スーツ製造技術の向上など諸般内情の変容により、全体像及び細かなディテールで昭和版とは見て呉れが相当異なるのである。つまり同じ『大怪獣バトル』を冠していても、「ウルモン」版(ゲーム版)と「対決セット」版(テレビ版)は、厳密には「違うもの」として分かたれるべきなのだ。ややこしいが。更に更に他方で、ゲームの統一世界観からしたら、テレビ番組でどんな着ぐるみが作製されようとも一向お構い無し、「アントラーはアントラー」という身も蓋もない独善っぷりがある。以上、ともすれば「どうでもいい」よな瑣事に懊悩し、本「対決セット」版のアントラーを如何に扱うか迷うところであった。結句、原型自体が原初のアントラーを模した体裁である由緒に重きを置き、『ウルトラマン』第7話「バラージの青い石」登場の“初代アントラー”と量定し、当該項目に収載してみた次第である。斯かる冗漫の不本意こそは、並べてキャラクター・コンテンツの多岐に亘る数次登板が故。既往の財産に過度に縋る姿勢には、いい加減呪詛の念を。でも罪無き怪獣たちには、やっぱり愛玩の眼差しを...。


『HGウルトラマン ソフビ道』
シリーズ 其ノ二
バンダイ 2002年


 フィギュアとしての趣向について、割方リアルな造型と彩色で路線統一された、ミニサイズのソフトビニール人形シリーズ。玩菓ではなく、しかし筺入り。
 が、アントラーにとってはその「筺入り」がアダ。販売形態の都合上、他のラインナップ同様に、無論何れの商品(怪獣)も画一化された専用誂えの箱篋に納まる寸丈が前提である。仮令どんなに特殊な形状であろうとも、外装を突き破って軽々に食み出す事は当然罷り成らない。結句「特殊な形状」に当て嵌まる頭部を持ったアントラーをして、この不遇、このザマだ。「初めにパッケージ有りき」の形作りに、必定生じた無理・強引。何が駄目って...。
 クワガタムシを髣髴とさせる左右一対の大顎は、アントラーが“あり地獄”怪獣たり得るシンボルであり、「頭垂れる程」前方へ張り出して然るべきもの。それを聳やかす頭蓋もまた、不安定なまでに大きくてナンボだ。且つ「頭でっかち」を支える為の前屈みだって必須な要素、況んや背の丸みも決して疎かに出来ない筈。にも関わらず、御覧の体たらく。論の外も外。足んねぇ、全く以って「足らない」のである。何ひとつ。大顎のレングスも、鉢周りも、そして猫背の度合いも。無駄に肉厚な大顎が、唯々虚しいばかり...。そも操演者のシルエット掩蔽を狙った意匠は、頭部の寸詰めによって、畢竟著しい「人型」を晒す事と相成り、当初の目論みが台無しにされてしまうのである。
 そのような痛恨の造型に到らしめた素因は、既述どおり一も二も無く「筺」であり、とどの詰まりはサイズを厳しく制約・限定する販売体裁だ。これぞマスプロの弊害。チキン・ファームで“生産”された規格適合のブロイラー宜しく、狭隘な矩形に準拠して矮小化される個々の造作。あの猛々しくも優美な大顎は、一体何処へやら?復古調趣味を標榜したプロダクツであったならまだしも、「ソフビの温か味を残しつつ極力は本格指向」を謳う当該シリーズにあっては然に非ず。キャラクター自身の風韻を殺す、それは最早本末転倒、烏滸の沙汰である。
 さて、目を転じてカラーリングについて触れておこう。成型色のグリーンは、「砂埃に塗れた甲虫」の色としてなかなか的確だ。リアル系フィギュアでも、同種のビリジアンを採用した物が多い。妙趣あるキチンの光沢。これの再現失敗を回避するのならば、先ずは無難な選定と言えよう。特記すべきは、背面左右に置かれた目も醒めるよなスカイ・ブルーである。アントラーのフィギュアにあっては、この斑紋はオミットされがちであり、高々が1個200円也の価格設定を考えたら、尚更評価されて至当なポイントだ。マットな碧の体色に、原色の蒼がまあよく映えること!嘴の朱と共に。
 斯かる彩色の射当て・小成をしかし、大いに阻害しているのは、腹胸部を縦に走る左右ふた筋のイエローである。いや、黄色自体は剴切穏当なのだが。問題は色ではなく、これを確然たる二列にしてしまったという点だ。成る程映像やスチール等を瞥見すれば、そう見えなくもない。しかしそれは飽くまでも無秩序に配われたものであり、謂うなれば混沌たる迷彩柄。「はっきりとした二列」では決してない。また重ねて言うが、本商品は“ブルマァク”が如きレトロ調を意図した訳でもない。(ブルマァク後期版アントラーのソフトビニール人形は、赤による“二列表現”を施行 ※当頁4項目下参照) ここは従来品同様に黄色を一刷けするか、若しくは放射状噴霧なり何なり「テキトー」な誤魔化しで事足り得た筈だ。ところが余計な配慮が為に、グリーンとイエローが厭味な韻律を刻み、甲虫が遂には芋虫と成り果つるのであった。以上カラーリングの失策と、先述の不出来なフォルム。これらの相乗作用によって、不肖のアントラーは誕生したのである。
 他製品のソフビ人形に比して遜色無い造型と彩色を実践、『ウルトラマン』の登場怪獣を第1話のベムラーから順繰りにリリースして来た「ソフビ道」。であるだけに、この躓きはどうにも悔やまれてならない。全巻揃えれば、何十冊にも及ぶ文学全集やらコミック書籍やら。本来コンフォームされて然るべき装丁であるところを、とある一冊について(或いは中途以後全て)、要らぬ模様変えなんぞこましてみたり、それはもう何の山っ気?本来は画一化された背表紙の堵列で以って壮観である筈の本棚をしかし、土足で踏み躙って陵辱するシミ、黒点。そんな「みにくいアヒルの子」が、白鳥に化けるでも無し...。全く意に満たない「ソフビ道」版アントラーを、同シリーズ他陣容の中に放り込んで賞翫すれば、あからさまな違和は必至、居住まいの何と悪い事か。その残毀の有り様こそは、装丁の不揃いな全集書籍に汚辱された本棚に似たり。覚える薄ら寒さもまた通底。

『ザ・ウルトラマンファイト』
シリーズ(パート2)
バンダイ 2000年

 アントラーとウルトラマンのスケール差に無理があるが、両者それぞれの造型はなかなかのもの。ともすれば短くされがちなアントラーの大アゴも、申し分の無い長さで造形されている。また、深みのあるブルー系の彩色も良い。そしてウルトラマンの口周りのシワは、このサイズでは快心の出来だ。台座に配されたバラージ城壁と残骸など、まだ名鑑シリーズも生まれてない時代にある意味快挙とも言えよう。5円引きブロマイドなどでお馴染みのショット、そのチョイスも泣かせる。


『ウルトラマン全集』シリーズ
バンダイ 1995年


 短い大アゴとキャッチーな色使いによるかわいらしいアントラーは、レトロタッチを意識されて作られており、まさにおもちゃとして味わい深い。レトロ調とは言え、微に入り細を穿ち精緻に作り込まれた頭部の細工、丁寧な体表のモールディング、そしてアントラー特有の色合いなど、何ひとつ侮れない。作為に厭味の無いレトロ・アレンジだ。このシリーズではほかに、ペギラレッドキング、アーストロン、グドンなど、その出来栄えの良さが印象に残る。


『HGブルマァク魂』シリーズ 2
バンダイ 2001年


 懐かしいブルマァク人形のカプセルトイ化で、このアントラーは「マルサン2期カラーリング」のもの。クワガタムシのような容姿を持つアントラーのソフビ人形は、昭和当時の子どもたちに俄然人気があって、バルタン星人の人形とともにこれを持っている子どもは多かった。大顎を欠損しているのも当時は多く、そういった想い出とともに、愛着が湧く“おもちゃ”である。頓狂な形状、グリーンとイエローの冴えなど、見れば見るほど味わい深い。


『HG真ブルマァク魂』シリーズ 2
バンダイ 2003年


 販売体裁をカプセルマシンから箱入りに変更し、更に“タグ付きビニール袋入り”という、昭和当時そのままの販売形態を再現させて展開したシリーズ。このアントラーは「ブルマァク後期小ロットスプレーカラーリング」による彩色で、マルサン2期のイエローを廃し、大胆にも赤のスプレーを前面と背面に走らせた凄まじい色合いが特徴だ。まるで極彩色に輝く玉虫イメージである。もちろんクワガタムシの愛すべき形状は、失っていない。


700円ソフビ 『ウルトラ怪獣』シリーズ
バンダイ


 価格変更に伴って彩色がリニューアルされたもの。原型自体はそれ以前のものをそのまま使用、ブルマァク人形を髣髴とさせる心和む造型だ。だが黄土色の原型色と大胆に施されたイエローの彩色には、もはやアントラーのイメージは無い。むしろ600円時代のグリーン原型色版の方が、まだアントラーとしてのイメージがあった。よって2005年に発売された『ウルトラマンマックス』版・アントラーの方を以って、オリジナル版としたいところである。


『特撮ヒーローズ』シリーズ
「ウルトラQ ウルトラマン」
プレックス 2007年


 SDスタイルのフィギュアで、デフォルメの重きを頭部に置いたのが特徴的なシリーズだ。色味の少なさは少々残念であるが、SDスタイルでも手を抜かない精緻な造型は、他のラインナップ同様に健在である。これだけアンバランスな体型であっても、側面から見たシルエットは紛れもなくアントラーのもので、込められた愛情が窺えよう。濃いグリーンに鮮烈なイエローが映え、更に突き出た目の白がアクセントとして活きている。


『SDMエスディーミュージアム
ウルトラマン』
シリーズ 2
バンダイ 2001年


 上記のプレックス製のものと同じくSDスタイルのフィギュアだが、こちらは完全にまんべん無くデフォルメが為されている。卓抜したSD化のセンスによる造型は見事であり、また彩色に到ってはHGシリーズのものを踏襲したような“砂被り”を髣髴とさせる素晴らしい色合いだ。パーツは4分割に分れ、「SD」だからと言って決して軽んじることが出来ない凝り様を堪能できる。

『ウルトラマン Bot-Biz』 PART.1
ラナ 2002年


 大顎や四肢、何もかも寸詰まり気味の感があるボトルキャップ・フィギュア。片膝をついたポージングの綾には工夫が見られるが、それ以前にフィギュアとしての魅力に欠ける。色合いはまあまあ良く、また背中には青の斑紋が塗装されるという細かい配慮が為されているだけに、造型の方も等しく頑張ってほしかったところだ。この第1弾では不出来のものが多く、「全ラインナップ中ゲスラ以外はダメ」という、惨憺たる有り様であった。

徳間書店刊『ガシャポンHGシリーズ
オフィシャルコンプリートブック
1994-2003』附録
バンダイ 2003年


 アントラーのフィギュアではない。本エピソードに登場する“ノアの神像”、そのHG化である。所詮は書籍の附録なので、特に手が混んでいる訳ではない。だが、ウルトラマンと人類の太古の関係性を仄めかす重要なアイテムのHG化は、極めて有意義だ。凝った作りのものではないが、ファンであれば心くすぐられる一品であろう。まさにアイデアの勝利である。




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