どくろ怪獣  レッドキング




『ウルトラマン』 第8話
「怪獣無法地帯」

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『究極大怪獣 ULTIMATE MONSTERS』
シリーズ 5
バンダイ 2008年


 堅牢強固、ブロックの連接構造が織り成す頑強なその巨躯。荘重を標榜するバロック建築様式によってビルド・アップされた磐石な金城鉄壁、その顕現。シリーズ名に“究極”を謳うだけあって、拘泥り抜いた造型はさすが。間断無い凸凹に翻弄されながらも、全体像を豪壮に築き上げる稜線は、全く以ってレッドキングのシルエットそのものだ。正面から発せられる勇壮さや側面が魅せる雄大さ、また背面が遺す壮麗さなど、“王者”としての威風は、あらゆる方位からの鑑賞に耐えてこそ初めて完遂する。ややもすれば武骨気味に造形されがちなレッドキングのフィギュアだが、実際の着ぐるみ感に肉薄しようとした試みは、意外にも痩身に見えるトルソーに顕著だ。太過ぎず細過ぎず。実物を縮小した模型だからこそその匙加減は肝要であり、この“究極”・レッドキングにあっては、パースペクティヴを損なわない“肉の削ぎ落とし”が絶妙である。また緩やかに「U」字を描くサイドビューへのアプローチは、殊にレッドキングのフィギュアの中でも孤高をひた走っており、その「えび反り」には生命が放つ膂力が漲っているかのようだ。剛堅な結構を具な視点で捉えてみよう。緊密なブロックの重畳は丁寧かつ精緻に積み重ねられ、まるで熟練した煉瓦工の仕事振りで、レッドキング特有の荘厳さを見事に煥発している。曲げた肘部にはもちろんのこと、尻尾の躍動によって派生する蛇腹構造の疎と密の妙味にも是非刮目して頂きたい。正面と背面の中央部をそれぞれ縦に走る最も太い一条の“支柱”は、恰も頭蓋骨を支える脊柱の如し、ブロック連接はそのまま背骨を構成する椎骨の連鎖構造を髣髴とさせる。その頂きに仰ぎ見るは、やはり曝れ頭、野晒し。レッドキングが“どくろ怪獣”の異名を冠する来由に、はたと行き当たるのである。そのドクロ顔を側面から見れば平行四辺形、先細った尖頭にヒトの頭骨が醸す生々しさを喚起させられよう。孔を穿ったような虚ろな黒眼、深く裂けた口腔、これら細工を取り巻く起伏など、これはもう“どくろ怪獣”の名に遵守したと言っても良いくらいに徹底したドクロっぷりで、他のレッドキング・フィギュアの追随を許さない。以上のように寸分隙の無いレッドキングの形作りをして、卓抜された造型センスの恩寵と讃美されて然るべきなのだが...しかし惜しいかな、彩色という仕上げ作業ひとつが、一個の美術作品としての評価を著しく貶めている。成型色である黄土色を剥き出しのまま未塗装、凹部に墨入れされたブルーの何とも寒々しいことか。魚鱗を由来とするパール塗料が絡んだ本来の風合い、イエローとブルーが律する色調、黄と青の奏でるハーモニー、これら“レッドキング色”が発露する眩惑感がこのフィギュアからは微塵も感じられないのは、至極残念に思えてならない。原油高の当節にあって、カプセルトイや食玩などにおける彩色の端折りは致し方無し。だが不遇は、ギラリと光るような才で以って形作られたレッドキングだ。超絶技巧の造型美が泣いている。謹言この上も無く勿体無い。もうひとつ、もうひとつ何某かイエロー系塗料で成型色の駆逐を試みて、「彩色」が放つ発色が欲しかったところだ。原油高の煽りさえ無ければ、これが至高の逸品だったことは疑う余地も無いのだが...


ポリストーン製スタチュー
塗装済み完成品
浪漫堂 1997年


 頑健で逞しいレッドキングは肉厚の印象が強いが、それはみな成田亨の仕掛けと高山良策造型が織り成す眩惑によるものだ。殊に胴体部については、さほど太くはなく意外にも細身である。もちろん縮小化された玩具や模型にあっては、相応に「太らせて」造形しないと、著しくレッドキングとしてのイメージを損ねてしまう。よってこのスタチューについては、果敢にもその「痩身なレッドキング」に挑戦したことが注目点であり、また貴重な点でもあるのだ。スマートに造形されたこのレッドキングはしかし、シルエットの“らしさ”を全く損なっておらず、全高20cmにも満たないスケールから鑑みれば、それは見事と言うほかない。「骨太なレッドキング」。そのコモンセンスを転覆させてやろうという作り手の野心さえ、この「痩身なレッドキング」からは汲み取れると言うもの。こういうスラーッとしたレッドキングも、また“有り”なのだ。さて彩色についてだが、レッドキングが放つ黄色と青のハーモニー、その再現は極めて難しい。本フィギュアに施された塗装は丁寧であるとは言い難いが、凹部に喰い込んだブルーが全体のイエローの中で効果的に活きている。優れた造型であるが故に、手塗り作業の粗野さえもが、それでも「持ち堪えている」のであろう。次に初代レッドキング特有の、虚ろな“どくろ顔”はどうか。“らしさ”については、まあ申し分無い。だがレリーフ状の口腔内が、どうにも惜しまれる。出来れば立体的な「穿ち」が欲しかったところだ。口腔表現の難しさは、ポリストーンの脆さに起因している。この素材の弱点であり、今後克服されるべき点だ。最後に、このスタチュー独特の触感について触れておきたい。トウモロコシの実りのようなその肌に、指を滑らせてみたくなる硬質感と凸凹。これもまた、このスタチューが持つ魅力のひとつである。立ち戻るが「細身」であったればこそ、体表の凸と凹のメリハリを大胆につけることが出来たのであり、つくづくその試みに低頭する思いだ。他のフィギュアとは異なった解釈によるアプローチと成功。もちろんそれは、相応の造型力あってのこと。「木を見ても森を見失わない」観察眼とイメージのバランス感覚。その焼結こそが、このスタチューの本懐である。


『DGウルトラマン』シリーズ1
バンダイ 2009年


 「従来品(HG)を凌駕する完全塗装」なんて、実しやかに喧伝。而して俟たれた第1弾。蓋を開けてみれば、「成る程これが新機軸!」と合点ゆくバルタン星人の塗り。同弾アソートのウルトラマンもゾフィーもベムラーも、まあ“それなり”に造型・彩色共々向上。じゃあレッドキングは?と、先ずは拝見。象りについては「そうなんだろうなぁ」と思わせる緻密さ(※但しデジタル新技術が成型段階でどのように応用されたかは不明)なれど、着彩に到っては御覧の通り。“いつもの”手塗りが偸閑なイエロー&ブルーだ。舌を巻いたり、首を捻ったり。吃驚と懐疑が渦巻く、兎も角もDGの幕開けであった。

 ひょっとしたら赤と白が鬩ぎ合う口腔内、その截然たる塗り分けに、看板の“デジタル新技術”が揮われたのか。いや、これくらいの芸当ならHG時代でもやってのけている。では、心做しか鈍く光輝したように映じる目玉。このピンポイントに「ミリ以下のピッチ云々」と謳う、鳴り物入りの精密彩色が実施されたのか。だとしたら一寸詮無いなぁ。実のところ、どうなんだろう...。いずれにせよ体表の塗装(詳述すれば成型色の「砥の粉色」を侵蝕する「緑青〔ろくしょう〕」については、精査を俟つまでもなくアナログは歴然だ。動もすると髻の奔りさえ見えて来そうで。

 そもバルタン星人が如き「色彩の複雑な重なり合い」などとは違って、「そんなに神経質にならなくてもいいんじゃないの」と、斯かる折り合いを許容してしまうのが、レッドキングのイエロー&ブルーが擁するルーズさだ。殊更ハイテクを振り翳さずとも。ま、気負わずテキトーに。無論「らしく見える」事は必須肝要だが。仮令在来手法でお茶を濁されたとしても、別段良いのではなかろうか。この手塗り疑わしき筆触が、概してオブスキュア性を殺いでいるとも思えないし。

 目を奪われるのは寧ろ造型の方。それは、過去の同系カプセルトイと較べてみれば瞭然である。これの5年前(2004年)、HGシリーズ立ち上げ(1994年)爾来、実に10年振りに新規造形されたガシャポン版の初代レッドキング(当頁1項目下及び2項目下を参照)。所謂ver.2.0が発売された往時の「決定版かなぁ」なんて暢気な充足、此度のDGに相対するにつけ、迂愚な甘んじだったと自省頻りだ。「無上」の更に上をゆく「至上」が出て来ちゃうのだから、熟々フィギュアは面白い!涯無き希求とその滅茶に応える研鑽には、いやはや平身低頭、市場賑わす応酬の連鎖地獄を前に、唯々慄然とするばかりである。

 例えば『ウルトラマンA』のオープニングに登場する影絵のレッドキング。稲妻状に交互曲折したジグザグ・ラインの、何とマンガ的風合いが度を過ぎた事であるか。にも関わらず居反った威風は、紛う方無きレッドキングのもの。ブロックが連接する重畳構造と、それが描き出す輪郭、即ち凸と凹の犇めき合いは、取りも直さず怪獣王の表徴だ。どんなに縮められた模像であっても、視覚と触覚に訴えるギザギザは是が非でも欲しいところ。そこへ持って来てDGの来降。どうかすると折角誂えの造作を、潰しかねないカプセルトイ・サイズ。だが10cm足らずの寸丈で、聢とその稜線が活きている再現度には畏れ入る。このエッジを利かせたモデリングこそが、或いは“デジタル・グレード”による成型技術であったか。ともあれ小粒な此奴を握った時、「オレはここに居るゾ」と掌中から自己主張する凸凹の撥ね返りが、何とも愛くるしくて堪らないのである。

 そして木を見ても森を見失わず。蛇腹構造に翻弄されながらも、壮麗なレッドキングのシルエットを損ねる事無く、怪獣王の雄姿を結構。荘重さのトドメは、何は措いても尻尾の嵩であろう。納得のボリューム!HGシリーズより若干のスケール・ダウンを以って造形されたDGは、“統一寸法”に矢鱈と拘る諸兄らを憤慨させたりもした。しかし、なかなかどうして。尻尾のこの量感で、そんな雑件は帳消し、少しくらいの目減りなんか赦せちゃうなぁ、劇中さながら沼田(ぬた)打っているし...。斯くもあれ。徒や疎かに投げ出したよな格好の四肢と共に、テールの我が儘な躍動を以って、暴君の豪壮な佇まいは完遂を見るのである。

 又候カプセルトイが如き小サイズで、“着ぐるみ感”に詰め寄ろうとした果敢さにも俄然瞠目、易々とは看過出来まい。先ずは前述の尻尾。テグスで吊られ緩やかに湾曲した尾っぽは、表面と裏面、つまりカーヴの内と外で蛇腹構造に疎密が発生する。ある程度嵩の有る物ならいざ知らず、高々8cm也のガシャトイでこれを遣って退けたのだから、まあ見事、何てステキ!恰も奏でられる音楽みたいな、ブロック連接の緩と急。その旋律に耽溺、病膏肓に入りて...。次に自重で撓曲した下肢外皮。大腿の付け根で一度撓屈し、遵って膝に向かって頓に出っ張る縒れ具合。物理的な当為ご尤も、穏当至極。確かに其処には、人間の脚が「入っている」。このニュアンス。13cm弱スケールの“アルモン”(当頁2項目上参照)でも果たせなかった快挙、そを言祝ぎ讃えよ!

 以上冗漫ながら、発信側がDG第1弾に傾けた情熱の粗ましを、レッドキングを通して見詰めてきた。あの猛々しくも壮美なレッドキングが、ほぼ完璧な見目形で己が掌に乗ってこますのだ。もう欣幸の到りと言うほかない。向後未来の更なる技術躍進を当て込んで、ここで軽々しく「至上」と決め付ける訳にはゆかぬが...。それでもこれが上物である事は疑団の入る余地も無いし、手にした際の確かな手応えに、心は欣喜雀躍しちゃうなぁ、やっぱり。

 さて末筆になったが、締め括りに“趾の爪”について触れておきたい。本編に登場したレッドキングの足先には、爪は存在せず、本来鉤爪が嵌まる場所に爪根の孔が穿たれているだけだ。こういった趣向は、如何にもシュルレアリストの成田亨らしい常套だが、実は然に非ず。デザイン画にはちゃんと足爪が描かれており、「撮影段階で付け忘れた」というのが専らの定説らしい。経緯はどうあれ兎に角、「足先に爪が無い」姿こそが、我々が馴れ親しんだ怪獣王の唯一無比の真正であった筈。ところが当DG版のレッドキングには、矮小ながらしっかりと爪が造形されているではないか。「これは何の血迷い事か?」と、胸中穏やかならざる愛好家・同腹らの、メーカーに向けた呪詛の念が耳に届きそうだ。「敢えて作った」と含みを持たすバンダイだが、はて扠どうしたものか...。行き過ぎた婆心は最早“押し付け”、「余計な配慮」と断ずるファンの心情も汲める。でもここはひとつ、「並べて怪獣愛の為せる術」と、それを是しとして建設的に受け止めておきたいなぁ。このポチッとした瑣末な爪が、八面玲瓏な全体像を阻害している訳でもないのだし...。





『HGウルトラマン』シリーズ PART.37
怪獣無法地帯編
バンダイ 2004年


 HGシリーズの記念すべき第1弾に、レッドキングがラインナップされてから10年目。造型・彩色とも全て刷新、格段の出来の良さになって再登場した。スチール写真でお馴染みの、左に傾いたポーズの綾が何とも嬉しい。カプセルトイのサイズとして造型は申し分無く、連なったブロックひとつひとつの丁寧さが、カチッとしたレッドキングの体躯を決定づけている。更には傾いたポーズによって出来る縫いぐるみの緩急、その再現も素晴らしい。イメージとしての「堅」と素材としての「柔」が、同一フィギュア内に再現されている点は、他の小サイズ・フィギュアの追随を許さない。また“どくろ顔”の細工も出色で、殊に歯並びに施された彩色の異常な細かやさはどうだろう!口腔の「赤」と歯の「白」。そのコントラストが眩しい。だが全体の塗装についは難。実は写真のレッドキングは先行販売されたもので、実際に市場に出回ったものよりブルーが目立つ仕様だ。先行販売後に修正が入り、一般発売のものはもっとイエローが強調された仕様になっている。手持ちのものが有れば、是非ともその違いを見比べて戴きたい。尚、同弾にはチャンドラーもラインナップされ、レッドキングと組ませてバウト・シーンが再現できるようになっている。心憎い配慮だ。且つまたレッドキングのカプセルには、極小サイズのピグモンが附属した。こういったサービス振りを、最後に付記しておく。




『HGウルトラマン ガシャポンEX』
シリーズ PART.1
LOT:凸1
バンダイ 1998年


 記念すべきHGシリーズの第1弾発売から4年後、袋入りの体裁で再発売されたもの。よって原型自体は、第1弾のものをそのまま使用、彩色だけが変更された。大雑把に捉えられた造型は、HGシリーズの“印象派”とも言えよう。または、熟練工によってイメージだけで拵えられた伝統工芸品の域だ。今見ると稚拙さは否めないが、1994年当時はそれでも画期的な造型であった。この「EX版」は、ベースとして塗装されたブルーが、被せたイエローの下から「浮き出ている」微妙な具合が特徴だ。このデリケートさは注目である。


『HGウルトラマン』シリーズ PART.1
「バンダイガシャポンEXPO2000
(2000年8月開催)」版
LOT:凸3
バンダイ 2000年11月に一般発売


 HGが栄華を極めた2000年、ガシャポンのイベントが開催され、会場では栄えあるシリーズ第1弾も再発売された。これはその「EXPO版」が一般発売されたもの。造型はそのままのリペイント版だ。1998年の「EX版」と大きく異なる点は、下地のブルーが殆んど浮き出ていないことである。ややもすると、黄土色一色に見られかねない。また目の塗装については、ただの「黒点」から「怒り目」としての綾が付与されている。

『ウルトラ怪獣戯画』シリーズ
ウルトラ兄弟激闘史Ⅰ
バンダイ 2006年


 「名鑑シリーズ」を展開させた高位のシリーズで、突進するレッドキングに対してウルトラマンが首投げを決める名バウト・シーンを立体化。レッドキングのモールディングの精緻さには感服するが、却ってその細やかさが全体像を「ツルン」とさせてしまっている。レッドキングの体表には、やはり「引っ掛かり」が欲しい。また顔の細工にも、もっと凹凸があって然るべきだ。彩色については、イエローとブルーのバランスは程良い。だがやけにツヤのある光沢感は、「ツルン」とした造型と併せて、水棲生物のようで厭味である。ウルトラマンと組んだ躍動感は申し分無く、まさに“あのシーン”の再現と言えよう。

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ 1
バンダイ 2002年


 多々良島到着早々、科特隊を出迎えた2大怪獣の死闘、その再現である。ひとつの台座上に2体の怪獣はお得感が有るが、反面スケールが小さくなってしまうのがこのシリーズの難点だ。肝腎要の「迫力」が、殺がれていること甚だしい。しかしそうは言っても、スチール写真などでお馴染みのあの“名対峙”の雰囲気をそのままに、手のひらサイズのオマケとして展開されていることが、どこかくすぐったくていとおしい。レッドキング自体の出来は、造型・彩色ともにこの小サイズでは申し分無い。触れれば指に凸凹が「引っ掛かる」し、イエローとブルーの調和も見事だ。スラッとした佇まいも、雰囲気に忠実である。

『ウルトラ怪獣名鑑シリーズEX
ウルトラパノラマファイト』
ラウンド1
バンダイ 2006年


 名鑑シリーズの脱線企画で、「レッドキング対ゴモラ」という、昭和当時に児童書などで展開された“夢の対決”を立体化。「架空対決」におけるこのレッドキングは、強敵・ゴモラを前に居丈高で精悍だ。造型について特筆すべきは全身のモールディングで、これは「彫り込み」ではなく、ひとつひとつ「直づけ」されたのではなかろうか?まるで実ったトウモロコシ一粒一粒のような、ブロックの凸の有り様である。殊に尻尾の先端に到っては、筆舌に尽くし難い細かさだ。気も狂わんばかりの作業が偲ばれよう。彩色についてはブルーが際立ち過ぎだが、“荒ぶる怪獣キング”として見れば合点もいく色合いだ。ゴモラとの絡みもケレン味に溢れ、大怪獣同士の戦いが織り成す「迫力」がそこにはある。尚この“夢の対決”は、2007年の『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』において実現された。

『HGウルトラマン イマジネイション』
シリーズ Part.2
バンダイ 2003年


 チャンドラーとの死闘の末、喰いちぎった右翼を咥え、威丈高に勝ち誇るレッドキング。というイマジネイション。踏みつけられたチャンドラーが恨めしそうだ。このシリーズは独自の解釈による飛翔の有り様が「売り」だが、レッドキングの造型については少々の恐竜体型が為されているだけであり、控え目なイマジネイションと言えよう。上記「パノラマファイト」同様、「直づけ」されたであろうモールディングは、触れば心憎い抵抗が指と琴線に抵触。いとおしい。凸の溝を走るブルーのツヤは、この場合あたかも体液の迸りを髣髴とさせ、生命あるものの息遣いとして作用している。特筆すべきは、目も虚ろなその“どくろ顔”。無垢けき顔をして、他の生命を躊躇無く絶つ。まさに野生生物が有する生殺与奪の権利、その顕現である。

『円谷倉庫』
レッドキング・アボラス コンパチモデル
(レッドキングカラーVer.)
バンダイ 2008年


 文字通り、円谷プロの倉庫に眠るプロップをフィギュア化。切り口としては面白い意趣である。レッドキングのボディ部はそのまま、頭部だけを挿げ替えてアボラス、更にはレッドキング2代目へと流用したリサイクル遍歴は余りにも有名。果たして倉庫内にて斯様な保管のされ方をしていたかは甚だ疑問だが、昭和往時における舞台裏の活況・熱気を伝えるには恰好のモチーフだ。

 このレッドキングの金色は、勿論2代目仕様。附属した初代レッドキングまたはアボラスの頭と挿げ替えて、それぞれゴールド仕立てに出来るのが欣幸の到り、何とも刺激的な企図であろうか。尚、青いアボラス・ヴァージョンもアソートされているので、そちらではブルー仕立てのレッドキングも堪能できる。

 さてフィギュア自体の出来映えだが。連接ブロック構造の精緻さ、そして尖頭した特徴的全容は、紛う事無きレッドキングのシルエット。掌サイズのものとしては、至高の部類に入る造型だ。また黄金ボディを表装する煤けは、如何にも「倉庫っぽい」ニュアンスで、ともすれば哀愁さえ帯びているかのようである。初代レッドキング2代目の差異として、目の表情のほか、首の角度さえも違えて造形されており、その心憎い拘泥わりにも是非刮目せよ。

『円谷倉庫』
レッドキング・アボラス コンパチモデル
(アボラスカラーVer.)
バンダイ 2008年


 上掲レッドキング(2代目)のカラーリング、即ちゴールドの仕様に対して、此方は緑青(ろくしょう)色で着彩されたアボラスカラー仕立て。勿論原型は同じ物を使用。ブロンズ色より成るレッドキングの異容が、兎も角も新鮮だ。成田亨による意匠の原初段階では、「ブルーのレッドキング」という構想もあったそうだから、そんな「たら・れば」に思いを馳せて愉しむのも一興だろう。

 唯グリーンをベタ塗りしたのではなく、独特の蛇腹構造を活かし、上方から見ると青いアボラス寄りに、そして下方から仰視すれば黄色いレッドキング寄りになるよう、二色の噴き付け処理が為されている。遵って御覧の通り、えも謂われぬ眩惑感が発露、青と黄のハーモニーが美しい。果たしてそれが、倉庫内のプロップとしてどういった趣意の下に企図されたのかは与り知らぬが、恰も立体物上にレンティキュラーの作用を見るみたいで、何はともあれ心憎い配慮だ。まあ「上層のアボラスカラーが剥落し下層のレッドキングカラーが浮き出ている」と、ここはひとつ想像を逞しゅうして賞翫すべし。尤もアボラスのヘッドにまで砥の粉色が滲み出ているのは、詮方無き事なれど...。

 発売当初は斯かる“色換え企画物”に対し、「どっちか一方が有ればいいや」なんて雲煙過眼な姿勢でいたが、「金色のアボラス」を手にしたとき、「やっぱり青いレッドキングも」と、結局珍奇嗜好の食指が騒わめいた次第。レッドキングカラーVer.の倉庫内で埃を被ったような煤け具合と、アボラスカラーVer.の塗料削剥が如き二重の色彩構造と。単なるカラーチェンジに堕さず、「両方揃えてこそ意義有り」としたバンダイの小狡さに、嗚呼為て遣られたり。

『ART WORKS COLLECTION
~featuring Yuji Kaida~
ウルトラQ/ウルトラマン』
シリーズ 大怪獣バトル EX Edition
(オリジナルカラーver.)
メガハウス 2007年

 “怪獣画伯”で知られる開田裕治。氏の「迫力ある」イラスト絵をフィギュア化したシリーズに、怪獣王が登場。「多々良島の激闘」と銘打たれたウルトラ屈指の名バウト、即ち[レッドキング対ウルトラマン]の活写だ。画像は2006年に発売された物のリペイント版であり、この“オリジナルカラーver.”の他に、劇中のイメージに重きを置いた“ライブスーツカラーver.”が混在した。

 二大巨頭の対峙を主軸に据え、マグラーや捥がれたチャンドラーの翼、果ては岩場に仰臥するピグモン(死体?)と、囲繞する脇役たちも矢鱈と充実。掌サイズながら、贅沢な出来映えだ。レッドキングの流麗なうねりは、図説ならではの解釈。その迂曲した肢体表皮を埋め尽くすブロック連接が、小から大へ、大から小へと、美しく階調を遷ろわせ、まるで交響曲を目で聴くようである。メタリックな塗装も元絵に忠実であり、魚鱗を由来とするレッドキングの“あのギラつき”にも通底しよう。同じくシルバーを光輝させるウルトラマンのボディと共に、両者が相織り成すコントラストが見事だ。“添え物”であるマグラーも緻密に造り込まれており、決して手を抜かぬ丁寧な製作姿勢には好感が持てる。

 しかし...。斯様な美点の数々も、肝腎の「迫力」が殺がれたミニチュアールでは、折角の精彩を減殺する結果に。主題である筈のレッドキングとウルトラマンの絡み合いは、小じんまりと纏められた為に、期待された躍動の度合いも何だか稀薄だ。原画の豪壮さには、到底及ぶものではない。絢爛たる脇固めを以ってしたジオラマの拵えも、コンパクトが故に却って散漫。メインを惹き立てるどころか、寧ろ侵襲しかねない五月蝿さである。どれもこれも一つびとつは良く出来た造作であるのに、この為体...。

 仰視気味に賞翫してこそ効力を揮うよう、画伯によって仕掛けられた完璧なるレイアウトやコンポジションや。二次元で初めて活きる構図はしかし、三次元化にあっては不向きという当為、帰結。バックを含んだ「絵画作品」の立体化に当たって、もしオリジン通りのパンチを利かせようとするのならば、それ相応の、いや可也の嵩が必要だ。画家と鑑賞者たちの間で、それぞれ個別に成立する絵の中のheight(高さ)とdepth(奥行き)。そのような各々の距離感覚は決して画一化される事なく、遵って易々と掌になんぞ乗っかってはならないのだ。また本品を写真に撮った場合、つまり三次元化された物を再び二次元に戻した時、アングル如何では喪失した「迫力」が或いは復元するといった事象。これなんかも、当テーマが平面鑑賞用に誂えられたかを裏打ちする証左に他ならない。

 人気イラストレーターの作品を、背景までをも再現しジオラマ風に模像・模型化。怪獣フィギュア飽食の時勢の中で、いま一度違った視点で見詰め直そうとする、その狙いは確かに刺激的で面白い。面白いがしかし、どうも本シリーズにあっては、斯かる「迫力の欠如」が目に付き、よって随分と損をしている気がしてならない。


『HGウルトラマン ソフビ道』
シリーズ 其ノ三
バンダイ 2002年


 寸詰まり気味の首が気になるぐらいで、ソフビ人形としてはソツの無い出来栄えである。顔の精緻な細工、体表のモールドの細やかさ、尻尾の適度な長さと「のたうち」、右に傾げたポージング、そして全体的なシルエットと、ミニサイズのソフビ人形としてこれ以上望むべくものは無いくらいだ。ブルーの浮き出しも、それ相応に効いている。手に持ったときの「ガタガタ感」も申し分無く、レッドキングが本来持つ骨太なイメージを遵守した造型と併せて、玩具として味わい深い。

『特撮ギャラリー』シリーズ No.2
バンダイ 1998年


 ウルトラマンがレッドキングの首をつかんで引き寄せているこのシーンは、特写スチールでお馴染みのショットだ。馴染み深い場面を切り取る意趣は、その後「名鑑シリーズ」(2002年~)へと引き継がれるが、1998年当時の胎動期においてはまだその技術が稚拙であった。両者が組み合った雰囲気の再現。その意気込みは買うが、如何せん肝腎のレッドキングがダメ。特に全身を迸るブルーの筋がまるで液体のようであり、イエローとの絡みも厭味だ。


『キャラエッグ ウルトラマン』シリーズ
バンダイ 2004年



 極小サイズながらも、軽んじられない出来栄えだ。何よりも、触って心地よい「ガタガタ感」の健在振りに驚かされよう。モールディングが織り成す山と谷のせめぎ合い。その最小限界への挑戦である。傾いたポージングや尻尾の動きなど、細やかな配慮も忘れていない。塗装についても、「レッドキング色」として申し分の無いイエローとブルーのハーモニーだ。注目すべきは口周りの塗装で、喰いしばった歯列の周囲に引かれた極細ラインのピンク!この鮮烈さには、我が目を疑うほどだ。


700円ソフビ
『ウルトラ怪獣』シリーズ
バンダイ



 600円時代のものを造型から刷新、彩色もよりイメージに近付いた。ややレモンイエローのソフトなタッチが気になるが、スタンダード・サイズのソフビ人形としてはソツの無いまとまり方だ。どことなく可愛らしく見えてしまうのは、初代レッドキングには見られなかった白目の存在によるもの。蛇腹のモールディングや顔の細工、また口腔の塗り分けなどは申し分無い。全体的にずんぐりした量感も、ソフビ人形ならではの味わいとして受け取れよう。


『HGブルマァク魂』シリーズ 2
バンダイ 2001年



 昔懐かしいブルマァクのソフビ人形、そのカプセルトイ化。“ブルマァクカラーリング”仕様の鮮烈なイエローが、往時の記憶を喚起させる。『ウルトラマン』怪獣のソフビ人形では、バルタン星人アントラーと並んで、このレッドキングも人気があった。今見ると、スマートな造型に驚かされる。当時は必ずしも、「太った」イメージではなかったという証左だ。頓狂な顔つきとシルエットは、もちろん懐かしく愛らしい。ボディ中央を大胆に走るブルーの一筋に、昭和当時の怪獣世代は泣く。


『HG真ブルマァク魂』シリーズ 2
バンダイ 2003年



 販売体裁をカプセルトイから箱入りに変更、更に「タグ付きビニール入り」という往時の販売形態さえ再現した「ブル魂」の新シリーズ。“ブルマァク珍色カラーリング”による赤いレッドキングは、イエローとグリーンのスプレー噴き付けと相俟って、呆れるほどの毒々しさだ。赤は、おそらく“レッドキング”の「レッド」からの発想であろう。正直この“赤レッドキング”は、昭和当時見かけた記憶が無い。まさに“珍品”だ。

『HGウルトラマン イマジネイション』
シリーズ Part.3
バンダイ 2004年


 『ウルトラマン』第37話「小さな英雄」で、デパートに出現したピグモンが、玩具に囲まれて眠りこけるひとコマ。その名場面をアレンジした、ピグモンのイマジネイション・フィギュアに附属。棚に鎮座ます玩具を、更に縮小・簡素化したものである。当時絶対的人気を誇ったブルマァクの怪獣人形、レッドキングのほかウルトラマン・バルタン星人カネゴンら昭和少年必須のアイテムをフューチャリング。その殺人的愛狂しさは、斯様な簡略化を経ても尚健在、改めてブルマァク人形と昭和玩具の味わい深さを思い知るものである。


『ウルトラマン全集』シリーズ
バンダイ 1995年


 ままごと遊びで使われる野菜などの模型。このレッドキングはまさに、ままごと版のトウモロコシだ。レトロ調の造型は、ブルマァク人形に負けず劣らずの愛嬌さである。モールドの「ぎっしり詰まった」感によって、触ったときの「ガタガタ感」は無いが、だからこそトウモロコシの種実と言えよう。色味の乏しさは否めないものの、ブルーの噴き付けと黒ゴマ目のアクセントが活きている。味わいあるチープさが、何とも愛くるしい。


『特撮ヒーローズ』シリーズ 「ウルトラマン」
プレックス 2006年、
           2009年(再販)


 このような、誇張した頭部に嵩の重きを置く恰好の“SD”フィギュアの場合、尖頭稜線が流麗なレッドキングにあっては、必ずしも効果的に作用するとは限らない。怪獣王者・レッドキングが描くシルエットの本領は、宗教的精神を煥発させるよな仰高性、その荘厳さに在るのだから。成る程、精緻な顔の造作や握り拳の絶妙さ、全身を被覆する連接ブロックの丹念、また若干後方へ居反ったポーズの綾など、2頭身ながら頭抜けた歪形アレンジのセンスは流石だ。然し乍ら「頭を大き目に」という本シリーズにおける統一概念が為、却って「らしさ」が著しく損なわれているのは可惜無念である。随所の造型が極めて良いだけに。イエローに「ペラッ」と一刷けされたブルーも、本来ならオモチャの味わいとして映えるのだろうが、何やら寒々しく思える。尤も斯様な「頭でっかち」であったればこその、白と赤の截然、歯列と口腔の塗り分け遂せだったのやも知れぬが。


『SDMエスディーミュージアム
ウルトラマン』
シリーズ 3
バンダイ 2002年


 卓越したデフォルメのセンス、精緻に作り込まれた造型、そして丁寧な彩色。SDスタイルのフィギュアとは言え、決して軽視することの出来ない。“リアルなSDフィギュア”という矛盾した方便を体現してみせた、草分け的シリーズだ。このレッドキングも、造型・彩色ともに尋常ではない出来栄えである。手にしたときの「ガタガタ」や、イエローとブルーの調和も申し分無く、特に顔の造型については、「SDデフォルメ」のひと言では片付けられない。

ウルトラマン ボトルキャップフィギュア
三ツ矢サイダー 2003年


 映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス』公開に先立って、ペットボトル飲料に付属したもの。小さくなりがちなボトルキャップ・サイズにあって、このレッドキングの量感には目を見張る。キャップからはみ出た尻尾が嬉しいばかりだ。精緻に作り込まれた体表のブロックには脱帽、また細部にまで配慮の行き届いた顔の造型と彩色などは、もはや尋常の沙汰ではない。ボトルキャップ・フィギュアとしては、これ以上望むべくもない出来だ。




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どくろ怪獣  レッドキング


『ウルトラマン』 第8話
「怪獣無法地帯」


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