高山造型の緻密さには及ばぬものの、水棲人らしさがよく再現されていて相応の出来栄えである。ラゴンの持つ不気味な表情も粗いながら健在で、あたかも海底に棲まうものの思慮深さを見る思いだ。刮目は塗装によって表現された湿潤を孕んだ体表の見事な「滑り」で、劇中さながらの「魚臭さ」を顕現させている。何よりも“オーシャン・グリーン”とも言うべきその深みのある碧色は、俄然ラゴンと言うほかない。“ポリストーン”という、目新しい素材の可能性を示し得た好例と言えよう。体躯的には、中に入った泉梅ノ介の腹の出た不恰好ささえ再現されていて、『Q』版ラゴンとの差別化がきちんと図られている。原爆1個付き。
夜の洋上で、船舶を襲ったシーンを立体化。「場面再現」を重んじるこのシリーズでは、海の怪獣はこういった具合に、下半身をカットされてウォーターライン・モデル風にフィギュア化される場合もある。造型・彩色ともに良いだけに、できれば全身像が欲しかった。HGシリーズのラゴンの出来が、芳しくなかっただけに悔やまれる。
ソフビながらHGシリーズより断然良い出来に見えるのは、造型もさることながら、黄系を効果的に使った塗装である。HGには無かった「原爆付き」という配慮も、素直に嬉しい。開け放たれた口、そして及び腰の身構えに、劇中さながらのラゴンの動きを見る。
ラゴン初のHG化は期待外れ。造型と体表の滑り具合は良いものの、塗装が全てを台無しにしている。特に顎下のヒレのベタ塗りが最悪で、もっと折り重なった複雑さを表現してほしかった。ただきっちり塗り分けただけの「塗り絵的塗装」によって、生物感が著しく殺がれている。残念だ。
ラゴンのイマジネイションは、劇中を凌駕する恐ろしさ。白目を剥き出しリーチの長い四肢で無慈悲にも船舶をへし折っている猫背姿に、『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する「使徒」を見る思いだ。カプセルトイの小スケールで、躍動感溢れるこの迫力!複雑な構造による海の部分が、非常に組み立てにくかったのも、今となったはいい想い出だ。
SDスタイルにデフォルメされたフィギュアだが、緻密な造型と彩色に刮目である。表情とポーズはまさに劇中のラゴンのものであり、SDフィギュアのひと言では済まされない本格的な出来栄えだ。着ぐるみ役者の演技の“あや”さえ感じさせる。