海底原人  ラゴン ~ 『ウルトラマン』 第4話 「大爆発五秒前」

放射能で巨大化、
狂ったラゴンが原爆とともに日本上陸!

 木星開発用ロケット「ML-1号」が事故を起こし、機体中央部の球状コンテナに搭載していた開発用の原爆6個もろとも太平洋上に落下、1個の原爆が日本海溝五千メートルの深海で爆発し、その放射能の影響で巨大化した海底原人。もともとは身長2メートル程度の海底に棲息する高等生物で、約2億年前には地球を支配していた。元来は音楽を嗜好する温厚な性質だが、放射能で巨大化したこの突然変異体は性格が狂暴化、音楽を聴くと逆に逆上する。未回収の原爆1個を身体に引っ掛けたまま、ポリネシアから白い航跡を棚引かせ、日本へ向かう途中船舶を襲った。その姿はまるで、自分をこんな目に遭わせた人類への復讐を果たしているかのようだ。沈静化を目的とした海上自衛隊による護衛艦からの音楽放送も、この狂ったラゴンには効果が無かった。三浦半島のリゾート地・“葉山マリーナ”より日本に上陸、原爆を回収しようとするウルトラマンに対して、口から白色の放射能光線を吐いて応戦する。格闘の際に帯びていた原爆が外れ、これによって光線技使用が可能となったウルトラマンのスペシウム光線を浴びて断崖から転落、海中に没し敢えない最期を遂げた。尚、ラゴンが持ち込んだ原爆は、爆発寸前にウルトラマンによって運び去られ宇宙で爆発した。

意匠と造型

 海底原人ラゴンは、間違いなく和製半魚人の最高峰である。人智及ばぬ深海5千メートルに棲まう住人の顔を顕現させたのは、造型を手がけた高山良策だ。「海底原人」なるもののかんばせは、進化の過程で陸上をその棲み家とした我々人類には到底及びもつかない。だが高山造型によるこのラゴンの顔と容貌に、我々は「もしかしたらそれが海底に実在するのではないか」という畏怖の念を抱くことさえ禁じえないのだ。高山造型による怪獣の肝は、その「息づき」にある。

 海底原人の息遣いを形作るものとして、先ずはその目を挙げてみよう。ラゴンの三白眼が見据える視線は、深い海底から陽の当たる海上を、そして人類が住む地上を差し貫く。ともすれば思案げなその目は、海底さえも我が物顔で汚し続けてきた人類への、もの言わぬ非難の光を宿しているかのようだ。本エピソードにおけるラゴンは、原爆の放射能によって巨大化・凶暴化している。元来の温和な性格と平穏な生活を、人類によって狂わされ奪われたのだ。人語を解さない「物言わぬ」半魚人が、おそらくは抱いているであろう地上人への怨嗟。高山はその復讐の炎のゆらめきを、ラゴンの眼光に宿したのである。

 その海底の「考える人」の顔面の皮膚には、気の遠くなるような悠久の「時間」さえ刻まれている。顔の側面を鼻先から外側に向かって走る幾条もの筋は、流麗な潮流のラインそのものの刻印であるかのようだ。それはあたかも、遥か大昔より海蝕を受け続けた崖や岩肌のように厳然としている。あるいは、臨海地に住み長きに渡って潮風に晒されてきた老漁師の険しい顔つき、そこに浮き彫りされた年輪とも言うべきシワを見るようだ。

 このようにラゴンの顔は、単なる水棲生物としての機能性だけでなく、太古から連綿と続く深い海底の脈動さえ備えている。言い換えればそれは、地球自体の生命活動の投射だ。そして我らが地上人より先に地球に棲息していた「地球先住民」という設定に、俄然合点がゆく。その造型によって、物語性まで表現してしまう異能の作家性。それが前衛美術家・高山良策の芸術性なのだ。


 ラゴンを「本邦唯一無比の半魚人」たらしめている要素を、いま少し敷衍してみよう。

 ピンク色の分厚い口唇は確かに魚類特有のもので、これは成田亨デザインと高山良策造型のコンビネーションによる怪獣に多く見られる特徴のひとつだ。ゲスラ(第6話)やガマクジラ(第14話)、グビラ(第24話)などが好例で、このように水棲生物には圧倒的な効果をもたらす。

 この「クチビル」の存在というものは、実は水棲生物に限らず、生物を息づかせるために重要な意味合いを孕んでいる。クチビルの存在はすなわち、その生物が肛門を有する証左だ。摂取と排泄。クチビルこそは、生物の基本的生命維持活動を意味する。遡ればそれは、『ウルトラQ』のM1号(第10話)やガラモン(第13・16話)、そしてもちろん(初代)ラゴン(第20話)のときに、既に息づいていたのだ。

 次に、泳ぐことに欠かせないヒレである。手足のヒレはもちろんのこと、スムーズに泳ぐことに適さない人型を補うかのように配された各所のヒレは、何しろ実例の無い水棲人の創造とあって、それが果たして本当に適所なのかは測り知れない。だがビジュアル的には、確かに適所と言うほかはないのである。手足の指を覆う水掻きや肘と腿に張り出したヒレに、また顔の側面と後頭部を走るのヒレに、あるいは首周りを覆う藻屑状のヒレに、そして流麗な放物線を描く2枚構造の背ビレに、なるほど「海底原人」としての合点がゆくのだ。

 さて仕上げは、全身を覆う皮膚である。下半身へ向かうほど過分になってゆく魚鱗の調子も素敵だが、何と言ってもその彩りに刮目だ。水から上がった際の日光を反射してギラつくラゴンの肌には、過剰に湿潤を孕んだ「滑り」があり、それこそは着ぐるみに生命を吹きつける極めて肝要なテクスチャーとなっている。画面を通して、魚臭さまで漂ってくるようだ。海底を偲ばせる深く鮮烈なグリーンは、その「滑り」によって初めて活きてくるのである。

 以上が、“和製半魚人の最高傑作”・ラゴンを息づかせているあれやこれやだ。もうこれ以上は無いというくらいに洗練された水棲人の姿は、実在しない「海底の住人」を前にした我々に、否応なしに首肯せしむるのである。かつて高山は、自分の妻のことを「ラゴンに似ている」と冗談混じりに話していたそうだ。しかしなかなかどうしてラゴン製作に傾けた熱情は、夫人に向けた「愛情」そのものの投射であったのかも知れない。


 本エピソードに登場するラゴンのマスクは、『ウルトラQ』に登場したラゴン(第20話)のものの再使用である。再登板にあたって付け換えられた箇所は、顎下首周りのヒレだ。そしてボディ部については、スーツの劣化が激しかったために、新しいアクアラングスーツに取り替えられている。『ウルトラQ』時のマスクに新調したボディスーツを組み合わせたもの、それが今回の巨大ラゴンだ。

 ちなみにラゴンのスーツ製作時には、同時進行で第8話登場のチャンドラーも作られている。チャンドラーの着ぐるみもやはり、『ウルトラQ』登場のペギラ(第5・14話)の改造だ。2体の着ぐるみ流用怪獣が時を同じくして作られていたことで、当時の台所事情や繁忙さが窺えよう。

 ラゴンのボディスーツはその後、第18話登場のザラブ星人 のボディ部に改修されることになる。「海底原人」の碧色の身体が、極めて近未来的なメタリック・ボディに流用されたことが、何やら象徴的で面白い。ラゴンザラブ星人の身体を実際に比べて見れば、あまりの異なった印象に驚かされるであろう。同じスーツを流用しながら、全く違った生命の誕生させるその仕掛け。まさに「成田・高山イリュージョン」だ。

斬られ役・泉梅ノ介

 ラゴンを演じたのは、泉梅ノ介である。『ウルトラQ』の雌ラゴンを演じたのは古谷敏だが、そのスマートな体躯はウルトラマン役者として馴染みだ。その古谷版・雌ラゴンの胸の隆起に対して、泉版・雄ラゴンは腹の出具合が際立つ。もしボディスーツの劣化が無かったとしても、泉の体型に合わせるための補修は必要であっただろう。

 さてその泉梅ノ介版ラゴンの動きだが、両手を振り上げての暴れっぷりは如何にも正統派の怪物らしく、ウルトラマンとの立ち回りもケレン味に溢れる前時代的ムードたっぷりだ。殊にウルトラマンにスペシウム光線を放たれ、崖から落ちる寸前のポーズは、さながら歌舞伎の大見得のようである。

 泉はラゴンのほかに、第8話登場のマグラーも演じた。こちらの方はウルトラマンと一戦交えることなく、科特隊によって撃退されている。地味で目立たなかった怪獣だ。

 ラゴンマグラー。泉が演じたウルトラ怪獣は、この2体のみである。“ウルトラ怪獣の顔役”・荒垣輝雄や鈴木邦夫とはひと味違った泉怪獣の、その貴重な活躍を是非とも映像作品で確認・堪能していただきたい。





“巨大”半魚人登場

 『大アマゾンの半魚人』(1954年ユニバーサル映画)より端を発する、数々の半魚人作品。半魚人は人間と同じ等身大であってこそ、その恐怖も本懐と言うべきであろう。

 もともとは『ウルトラQ』において等身大の大きさで登場したラゴンなのだから、「等身大半魚人」としての面目は既に躍如済みといったところだ。本エピソードのラゴンように巨大な半魚人が登場するケースは、無論“怪獣もの”である作品性を差し引いても、当時としては革新的であったと言える。

 何故なら「巨大な半魚人」はこのラゴン以降、白眉な例としてはあまり類を見ることができないからである。グビラ(『ウルトラマン』第24話)やムルチ(『帰ってきたウルトラマン』第33話)などは、巨大“魚怪獣”であって決して巨大“魚人”ではない。そもそも「巨大な人型の水棲生物」自体が発想し難く、それはラゴンのように「放射能によって巨大化した」という理由が無ければ説得力に欠けることに因るのであろう。

 したがって半魚人は、専ら等身大ヒーローものをその活躍の場とするのである。『仮面ライダー』に登場したピラザウルス(第16・17話)は毒トカゲをベースにした改造人間であるが、その姿は半魚人と言えなくもない。また焼死体の顔を髣髴とさせる怪魚人アマゾニア(第22話)の怖さは、半魚人として超一級だ。『大アマゾンの半魚人』を強く意識したデザインのアマゾンXもやはり、『鉄人タイガーセブン』という等身大ヒーローものに登場し、土曜の夜のお茶の間を恐怖のどん底に叩き落した。

 半魚“人”は、ミイラ“人間”のように“人”である以上、その恐怖も人間と隣り合わせに存在しなければならない。またそれこそが半魚人の本懐とも言えよう。海から川から、また湖沼から上陸する主が、一瞬“人”と見紛う姿であり、その異形が顕わになった次の瞬間こそが、水も滴る半魚人の恐怖なのだ。

 よって“巨大”ラゴンの怖さの成功は、稀有な例である。これはひとえに、たとえ巨大であっても『ウルトラQ』での恐怖がそのまま持ち堪え得る、高山良策造型が成せる術にほかならない。



恐怖への執着

 「ラジオをきくとおどりだす、ラゴン」。昭和当時の「怪獣カルタ」なるものに、そういう文言があった。だがこれは音楽に興味を示す『ウルトラQ』に登場したラゴンのものであって、このたび原爆の放射能によって巨大化・狂暴化したラゴンには、もはやそのような温厚な姿は見受けられない。未爆発の原爆を身体に帯び、葉山マリーナより上陸したラゴンの打ち震えるような咆哮は、まさに“復讐鬼”のそれだ。

 したがってこの巨大化したラゴンは、謂わば2代目である。『ウルトラQ』に登場した雌とは別個体で、胸の膨らみが無いところから判断すれば、巨大化ラゴンは雄だ。『ウルトラQ』のエピソードを発展させたこの巨大ラゴンは、ふたつのシリーズをリンクさせていることで注目である。

 脚本を手がけたのは、南川竜である。“南川竜”という名は、実は野長瀬三摩地監督の執筆時のペンネームだ。『ウルトラQ』ラゴン第20話「海底原人ラゴン」の脚本のクレジットは“野長瀬三摩地”(山浦弘靖との共著)となっているが、そのときはまだ南川竜のペンネームを使っていなかったのである。ともあれ『Q』にせよ『マン』にせよ、ラゴンの物語を書いたのは南川=野長瀬であり、当然メガフォンも自ら執っている。

 執筆業にしろ監督業にしろ、野長瀬が終始一貫して拘ったテーマは「恐怖」だ。『ウルトラマン』における恐怖の代名詞としてダダ(第28話)が挙げられるが、ダダの怖さ・不気味さの震源は野長瀬の恐怖への傾倒にある。また『ウルトラQ』でセミ人間がその正体を現わすシーン(第16話)は、強烈なインパクトで見るものに恐怖を残した。更に『ウルトラセブン』のワイアール星人(第2話)やバド星人(第19話)、シャドー星人(第23話)など、これら全て野長瀬が監督としてまた脚本家・南川竜として創り上げた名だたる恐怖である。

 高山造型によって命づけられた海底原人は、“恐怖の作家”・野長瀬によって息づく。だが此度の恐怖は、“水棲人”という異形からくる外見上のものだけではない。上陸したラゴンは原爆を抱えているのだ。“生理的恐怖”から“心理的恐怖”への変換。まさに野長瀬三摩地=南川竜の意欲作と言えよう。





葉山での撮影

 さて本エピソードでは、葉山へのロケーションが行われている。破格な予算が組まれた『ウルトラQ』ではセットに巨費を投じることができたが、『ウルトラマン』では予算削減のためにロケ撮影が多用された。

 葉山のほかのロケ先としては、三浦海岸(第5話及び第8話)や伊豆のシャボテン公園(第5話及び第20話)などが挙げられる。どうも『ウルトラマン』は、半島への出張が多いようだ。

 奥行きの物足りなさが出てしまうセット撮影に比して、ロケーション撮影はありのままの自然を映し出す。映像に深みと説得力を持たすという意味において、ロケ撮影の貢献と功績は大きかったと言えるだろう。


 ここで、本エピソードに登場する脇役に触れておこう。
  • ■葉山マリーナのバドミントンコートで、審判席に座わりゲームに興じる女の子が登場する。近藤美智子という子役だが、劇中の役名もそのまま“ミチコ”だ。彼女は第37話「小さな英雄」で、デパートに出現したピグモンに喜ぶ子ども役としても出演している。子どもらしいチャーミングな笑顔が特長だ。
  • ■夜の洋上、ラゴンに襲われる巡視船の見張り員を演じたのは、大塚周夫である。『ウルトラQ』第10話「地底超特急西へ」の靴磨きの客、そして『ウルトラマン』第21話「噴煙突破せよ」の高原レストラン支配人役など、ウルトラではちょいとした顔だ。大塚は俳優よりも、声優としての方が馴染み深い。『ゲゲゲの鬼太郎』のネズミ男や『チキチキマシン猛レース』のブラック魔王など、あのずる賢そうな声は広く知られるところである。

異者を示す名前

 海底で被曝し巨大化・凶暴化、その放射能もろとも日本に上陸し列島を恐怖に晒す。ラゴンのこの物語の骨子は、昭和の怪獣王・ゴジラ(1954年)のそれと全く同じだ。ラゴンもゴジラも、無論それを望んだ訳ではない。自ら放った原水爆によって、放射能の脅威に晒されるのは、全て人類自身が招いた“しっぺ返し”である。

 反核。平和へのこのメッセージは、物言わぬ「怪獣」によってもたらされる。被曝の畏れという形で。怪獣は「異者」である。人類ではなくほかならぬ「異者」という立場であるからこそ、その無言のメッセージは象徴的で痛烈だ。

 怪獣を「異者」たらしめたのは、もちろん人類である。この場合、人類とはすなわち我々日本人のことだ。怪獣を各々呼称する体裁上、日本人は怪獣に名前を付けた。「異者」であっても、いや「異者」であるからこそ記号付けは肝要なのである。

 ゴジラをはじめ、怪獣の名前に濁音やラ行音の付くものが多いのには、実は怪獣を「異者」たらしめる意思が働いているとしか思えない。何故なら濁音やラ行音は日本語には少なく、日本語として不自然だからだ。つまり濁音やラ行音を持つ名前は、我々日本人にとって外国人のように「異者」を示すのである。怪獣の如き自然界からはみ出た「異者」とは、我々を脅かすが故に排除すべき存在であって、そのためには同胞とは区別する記号が必要なのだ。

 だが「異者」はやって来る。人類への警告を携えて。“ゴジラ”も“ラゴン”も、「異者」を指す名前だ。放射能によって怪獣化してしまったゴジラやラゴンは、「異者」としての姿そのままがメッセージそのものである。その反核の体現者を前に、果たして人類は真摯にそれを受け止め得るであろうか?ゴジラもラゴンも、それを問いかけているのである。
























ウルトラ 場外 ファイト

 ラゴンはその名のとおり、
「ラァ、ゴォーン!」と鳴く。
これは『ウルトラQ』版ラゴンも
同じである。






ウルトラ 場外 ファイト

『ウルトラマン』に登場した
愛らしいクチビル怪獣。
リップ・モンスター集合!


◆ベムラー(第1話):
爬虫類であっても、
クチビルは重要だ。
◆ネロンガ(第3話):
口腔が外側にめくれて、
そのままクチビルに。
◆ラゴン(第4話):
『ウルトラQ』のときから
愛された、
半魚人のクチビル。
◆ゲスラ(第6話):
水陸両棲のトカゲでも、
クチビルは魚類のものだ。
◆ピグモン(第8話):
への字クチビルは、
ガラモン譲りで由緒正しい。
◆マグラー(第8話):
真っ黒な身体に、
チラと見せるクチビルの赤。
◆ガボラ(第9話):
ネロンガ・マグラーより
受け継いだ、
めくれ式クチビル。
◆ギャンゴ(第11話):
ベムラーのクチビルを、
愛らしいピンク色に。
◆ドドンゴ(第12話):
伝説の麒麟にも、
竜の如きクチビル。
◆ペスター(第13話):
オイルに吸いつくクチビルは、
吸血コウモリのそれだ。
◆ガマクジラ(第14話):
おぞましい姿の主の
クチビルは、
真珠を食む。
◆ガバドンB(第15話):
草食動物のような
クチビルは、
牛の無骨顔に似合う。
◆テレスドン(第22話):
律儀なクチビルは、
口腔を形作る
鋭いラインに沿っている。
◆ジャミラ(第23話):
元人間の悲しきクチビルは、
恨みの炎を吐く。
◆グビラ(第24話):
熱帯魚のクチビルは、
海棲生物ならしめる。
◆ギガス(第25話):
雪男は、
類人猿のクチビルを持つ。
◆ダダ(第28話):
ウルトラ怪獣一
悩ましいクチビル、
かもしれない。
◆ウー(第30話):
まぼろしの怪獣に、
まぼろしのクチビル。
◆ケロニア(第31話):
チラと垣間見える赤は、
クチビルか口腔か?
◆ザンボラー(第32話):
ガバドンBから受け継いだ
クチビル。
◆スカイドン(第34話):
超重量怪獣のクチビルは、
ガマクジラから譲り受けた。
◆ザラガス(第36話):
ピンク色のクチビルは、
魚類を髣髴とさせる。
◆ジェロニモン(第37話):
立派な顎ヒゲを蓄えた、
大酋長のクチビル。

ウルトラ 場外 ファイト

 『ウルトラQ』から『ウルトラマン』へ。
家計は火の車、『Q』怪獣の再登板や
着ぐるみの改造・流用多発。

ウルトラ自転車操業ファイト!

◆ゴメス
『ウルトラQ』 第1話
◇ジラース◇
『ウルトラマン』 第10話
・・
一旦東宝へ返却したゴジラを
再借用して再改造、
襟巻きを付けた。
◆ペギラ
『ウルトラQ』 第5・14話
◇チャンドラー◇
『ウルトラマン』 第8話
・・
全身を再塗装の上、
背中のトゲトゲと耳を
付け加えた。
◆ガラモン
『ウルトラQ』 第13・16話
◇ピグモン◇
『ウルトラマン』 第8・37話
・・
ウルトラ怪獣一あからさまで、
そして最も愛された流用例。
◆セミ人間
『ウルトラQ』 第16話
◇バルタン星人◇
『ウルトラマン』 第2話
・・
異形の昆虫怪人が、
ウルトラ一有名な怪獣に
変身。
チルソニア遊星人の宇宙船
『ウルトラQ』 第16話
◇バルタン星人の宇宙船◇
『ウルトラマン』 第2話
・・
宇宙船までもが、
セミ人間→バルタン星人
◆パゴス
『ウルトラQ』 第18話
◇ネロンガ◇
『ウルトラマン』 第3話

◇マグラー◇
『ウルトラマン』 第8話

◇ガボラ◇
『ウルトラマン』 第9話
・・
大元は東宝のバラゴンで、
改造に改造を重ねた流用例。
◆ケムール人
『ウルトラQ』 第19話
◇ケムール人2代目◇
『ウルトラマン』 第33話

◇ゼットン星人◇
『ウルトラマン』 第39話
・・
スーツを新調したり
背広を着せられたりするが、
マスクはそのまま。
◆ラゴン
『ウルトラQ』 第20話
◇ラゴン◇
『ウルトラマン』 第4話

◇ザラブ星人◇
『ウルトラマン』 第18話
・・
最終的に、
「原人」が「宇宙人」に。
◆ピーター
『ウルトラQ』 第26話
◇ゲスラ◇
『ウルトラマン』 第6話
・・
過剰な装飾によって、
全く異なる印象の怪獣誕生。









ウルトラ 場外 ファイト

 泉梅ノ介は、実は『ウルトラマン前夜祭』においてアントラーに扮している。しかしボディスーツが後ろ前逆で、わざとそうしたのかどうかは判然としない。が、泉梅ノ介という役者の妙味を見る思いだ。






















ウルトラ 場外 ファイト

本邦における半魚人の白眉
~昭和版~
◆海底原人ラゴン:
『ウルトラQ』
第20話「海底原人ラゴン」
『ウルトラマン』
第4話「大爆発五秒前」
に登場。
: 高山造型による半魚人は本邦随一。その怖さは、等身大であろうと巨大であろうと、またいくら歳月を経ようとも、決して色褪せることがない。
◆怪魚人アマゾニア:
『仮面ライダー』
第22話「怪魚人アマゾニア」
に登場。
: ピラニアからの着想だろうか。虚無的で真っ黒な目の孔と焼き魚のような肌が、焼死体を想起させる。非常に怖い。
◆深海魚人オコゼルゲ:
『超人バロム1』
第1話「悪魔の使い
深海魚人オコゼルゲ」
に登場。
: 過剰なギョロ目は、深海の重厚な水圧を感じさせる。アンゴルゲ(第7話)とともに、とにかく物凄い眼力だ。
◆海獣半魚人:
『緊急指令10-4・10-10』
第13話「海獣半魚人の反逆」
に登場。
: 半笑いな面持ちは人なつこそうなだが、それが却って不気味である。
◆吸血半魚人サメラ:
『サンダーマスク』
第5話「吸血半魚人の復讐」
に登場。
: ノコギリザメに着想しているが、2足歩行スタイルに半魚人のシルエットを見る。巨大化する半魚人の稀有な例。
◆半魚原人アマゾンX:
『鉄人タイガーセブン』
第3話
「逆襲!半魚原人アマゾンX」
に登場。
: ラゴンに継ぐ、和製半魚人の最高峰。そのスーツの出来栄えは、元祖・大アマゾンの半魚人に迫る勢いだ。ゆで卵のようにひん剥かれた白眼が怖い。












ウルトラ 場外 ファイト

 ラゴンが『ウルトラQ』と『ウルトラマン』にまたがって登場する利便性を活かし、劇場用作品『ウルトラマンZOFFY』(1984年)では、ラゴンが巨大化し人類の手に負えなくなったことを理由に、ウルトラマン初登場の方便としている。再編集ものならではの妙味だ。


ウルトラ 場外 ファイト

脚本業もこなす
野長瀬三摩地監督。
野長瀬三摩地”名義と
南川竜”名義の
ウルトラ脚本作品の全て。

  • 『ウルトラQ』

    ※“野長瀬三摩地”名義

    ◆第20話「海底原人ラゴン」
     (山浦弘靖と共著):
    恐怖の異形、海底原人ラゴンが島の漁村を来訪。
  • ※これより全て“南川竜”名義

    『ウルトラマン』
    ◆第4話「大爆発五秒前」:
    今度は巨大化したラゴンが、
    原爆をぶら下げて上陸。
    ◆第7話「バラージの青い石」
     (金城哲夫と共著):
    ウルトラマンの出自が、聖書の時代に遡って語られる。
    ◆第18話「遊星から来た兄弟」
     (金城哲夫と共著):
    出し抜けに、科特隊基地に
    現われた異形の怪人。
    ◆第19話「悪魔はふたたび」
     (山田正弘と共著):
    超古代の禁忌を解き放って
    しまったことによって 巻き起こる恐怖。
    ◆第29話「地底への挑戦」
     (金城哲夫と共著):
    黄金に魅入られた亡者は、
    怪獣より恐ろしい。
  • 『ウルトラセブン』
    ◆第19話
     「プロジェクト・ブルー」:
    ホラーテイストで描かれた、
    屋敷内の怪人。
    ◆第23話「明日を捜せ」
     (上原正三と共著):
    「お前さんの見た宇宙人は、こんな顔かい?」
  • 『ウルトラマン80』
    ◆第27話「白い悪魔の恐怖」:
    人間を蒸発させる、白い泡の恐怖。

 以上全9本になるが、お気づきのとおり共著作品が目立つ。野長瀬=南川が単独で執筆した脚本作品は、僅か3本を数えるばかりだ。そもそも監督業が本業なのだから、共著は至極当然なスタイルと言えよう。

ウルトラ 場外 ファイト

先の大戦の記憶も生々しい昭和。初期ウルトラ3作品『ウルトラQ』・『ウルトラマン』・『ウルトラセブン』において、原水爆は恐怖を表現するための単なる材料に留まらない。そこには痛切なメッセージが込められているのだ。日本を放射能の脅威に晒した『Q』・『マン』・『セブン』怪獣、列島蹂躙!

  • 『ウルトラQ』
    ◆パゴス(第18話):
    ウランを食べて怪獣化、
    今また原発を襲う。
  • 『ウルトラマン』
    ◆ラゴン(第4話):
    海底で原爆によって巨大化、
    更に原爆1個を帯びて葉山に上陸。
    ◆ガボラ(第9話):
    好物のウラン235を求めて
    出現、 放射能を撒き散らす。
    ◆レッドキング2代目(第25話):
    オホーツク海に廃棄された
    6個の水爆を飲み込んで、
    日本アルプスに出現。
  • 『ウルトラセブン』
    ◆ゴドラ星人(第4話):
    地球防衛軍基地へ潜入、
    原子炉爆破を画策した。
    ◆ギエロン星獣(第26話):
    母星を破壊された恨み骨髄、
    放射能を吐いて暴れる。

 またパゴス以外、ここに挙げたものの名前全てに「異者」を恣意的に表わす濁音とラ行音が付くことが、何やら象徴的に思えてならない。







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狂ったラゴン、原爆とともに葉山より上陸!



「海底原人」を雄弁に物語るラゴンの顔


















クチビルが怪獣を生物ならしめる


半魚人・ラゴン、滑る!











厳しい台所事情が窺える、スーツの頻繁流用













ケレン味たっぷりな、泉梅ノ介のラゴン


















巨大半魚「人」、あらわる!


巨大になっても、恐怖は健在だ














『Q』から引き継がれて、野長瀬によって描かれた
復讐鬼・ラゴン


野長瀬が一貫してこだわった「恐怖」






半島でのロケが多い『ウルトラマン』


近藤美智子&大塚周夫が関わった怪獣








原水爆の申し子・ゴジラ、そしてラゴン


「異者」は、海を越えてやって来る



我々は、「異者」のメッセージをどう受け止めるか?


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