有翼怪獣  チャンドラー




『ウルトラマン』 第8話
「怪獣無法地帯」

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『HGウルトラマン』シリーズ PART.37 怪獣無法地帯編_チャンドラー_前後

『HGウルトラマン』シリーズ PART.37
怪獣無法地帯編
バンダイ 2004年


 サンドベージュの成型色と、その上に塗装されたグリーン系の色とが相俟って、なかなか厭味な色合いを発している。生物としてリアルなのかもしれないが、見る角度によって黄土色が際立ってしまい、まるで泥土のような印象は拭えない。そもそもペギラの着ぐるみを流用したチャンドラーの色は、塗り重ねから来る複雑な混ざり具合が有って、一概に「何色」とは言い難い。その塗装工程を忠実に準えなければ、きっとあの煤けた趣きのこげ茶色は出せないのであろう。HG化にあたって色々と試行錯誤しての結果なのだろうが、このチャンドラーの彩色はしかし違和を覚えてしまう。さて造型についてだが、これはもう申し分無い。全体的なフォルムはもちろん、オストリッチ皮革を髣髴とさせる突起やペギラ譲りの寝呆け眼など、細かい造作にまで行き届いた配慮はさずがHGシリーズだ。また右側に傾いたポージングの綾は、まさしく劇中のチャンドラーそのもののイメージである。同弾にアソートされたレッドキングと組ませられることが、素直に嬉しい。

『HGウルトラマン』シリーズ PART.37 怪獣無法地帯編_チャンドラー_仰角・レッドキングと

『HGソフビ道 ウルトラマン』 シリーズ 其ノ三_チャンドラー_前後

『HGソフビ道 ウルトラマン』
シリーズ 其ノ三
バンダイ 2002年


 こちらのチャンドラーの目は寝呆け眼ではなく、カッと目蓋を見開いている。半開きと全開。どちらもペギラ譲りである。彩色はこげ茶の成型色に、同系色で濃淡がつけてあるだけのシンプルなものだ。だがこれが却って、チャンドラーのイメージとして釣り合っている。また耳(状の角)に到っては、フレアー部分との塗り分けが施されており、その細やかな配慮は刮目に値しよう。海棲哺乳類特有の鼻面、フリッパー翼のシワ、そして体表のモールディングなど、造型的にもミニサイズ・ソフビとしては遜色が無い。牙や角のシャープさには欠けるが、それもまたソフビ人形の愛嬌として受け止められよう。

『HGソフビ道 ウルトラマン』 シリーズ 其ノ三_チャンドラー_仰角・レッドキングと

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ 1_チャンドラー_レッドキングと

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ 1
バンダイ 2002年


 多々良島においてレッドキングとの死闘を繰り広げたこのチャンドラーは、すっくと仁王立ちしたポージングだ。単体では味気の無い直立フィギュアだが、台座に載せレッドキングと並べたときに、劇中の雰囲気が甦る。スチール写真などでお馴染みの、黄色とこげ茶色のコントラストが印象的なあのシーンだ。フィギュア自体も極小サイズながら、翼のシワや顔の細工など、精緻な仕事に好感が持てる。名鑑シリーズの第1弾として、外せないタイトルだ。

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ 1_チャンドラー_レッドキングと

『HGウルトラマン イマジネイション』 シリーズ Part.2_チャンドラー_レッドキングと

『HGウルトラマン イマジネイション』
シリーズ Part.2
バンダイ 2003年


 むざんやな 甲の下の きりぎりす –松尾芭蕉-
 右翼を喰いちぎられ、勝利者・レッドキングに踏み躙られた哀れなチャンドラー。実際にはレッドキングの類い稀なる腕力によって片翼をもぎ取られ、戦意喪失のまま退散しているので、フィルム化された作品にこのようなシーンは無い。イマジネイティブ、つまり想像を増幅させたこのチャンドラーの注目点は、コウモリの骨格構造を思わせる屈曲した前肢と、舌を出した「くたばり顔」だ。惨敗者の恨み節さえ聞こえて来そうな形相によって、酸鼻極まる決闘は完遂するのである。

『HGウルトラマン イマジネイション』 シリーズ Part.2_チャンドラー_

『SDMエスディーミュージアム ウルトラマン』 シリーズ 3_チャンドラー_前後

『SDMエスディーミュージアム
ウルトラマン』 シリーズ 3
バンダイ 2002年


 SDスタイルながら、毎回卓越したデフォルメのセンスで驚かされるこのシリーズ。猫背がかったシルエットはまさしくチャンドラーのものであり、微妙な表情や体表のイボの多さ、全体的なゴワつきなど、丁寧な仕事振りは圧巻だ。またペギラ由来の顎ヒゲの存在には、「SDなのに...」と思わず舌を巻く。精緻に作り込まれた造型だけに、色味の少なさが何とも惜しまれよう。2.5頭身の可愛らしさの中に、作り手の気迫が込められている。

『SDMエスディーミュージアム ウルトラマン』 シリーズ 3_チャンドラー_仰角・レッドキングと


『ART WORKS COLLECTION
~featuring Yuji Kaida
~ウルトラQ/ウルトラマン』
シリーズ
大怪獣バトル EX Edition
(オリジナルカラーver.)
メガハウス 2007年

『ART WORKS COLLECTION ~ featuring Yuji Kaida ~ ウルトラQ/ウルトラマン』シリーズ


 夏草や 兵どもが 夢の跡 –松尾芭蕉-
 激闘の残滓。勝者である怪獣王が猛り、その足許に惨めにも打ち棄てられた、無謀な噛ませ犬の痕跡。曾ての健勝と溌溂を偲ばせるフリッパー翼の、根元からの捥がれ、つまりは生命の断絶。鮮血は未だ温もれど、嗚呼、我唯一介の塊肉也...。

 レッドキングが突っ立つ傍らに、放ったらかしの片羽。即ちそれは「ヤツが居た」証し。こういったアイデンティファイは、チャンドラーならでは。なので高々が残骸について、フィギュアとしての出来如何を云々する事は、烏滸の沙汰と言うものだろう。只管に、哀れな此奴めのレーゾンデートルに思いを馳せ、果敢で向こう見ずな闘犬の傷痍ないし戦没を悼もうではないか。



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