サンドベージュの成型色と、その上に塗装されたグリーン系の色とが相俟って、なかなか厭味な色合いを発している。生物としてリアルなのかもしれないが、見る角度によって黄土色が際立ってしまい、まるで泥土のような印象は拭えない。そもそもペギラの着ぐるみを流用したチャンドラーの色は、塗り重ねから来る複雑な混ざり具合が有って、一概に「何色」とは言い難い。その塗装工程を忠実に準えなければ、きっとあの煤けた趣きのこげ茶色は出せないのであろう。HG化にあたって色々と試行錯誤しての結果なのだろうが、このチャンドラーの彩色はしかし違和を覚えてしまう。さて造型についてだが、これはもう申し分無い。全体的なフォルムはもちろん、オストリッチ皮革を髣髴とさせる突起やペギラ譲りの寝呆け眼など、細かい造作にまで行き届いた配慮はさずがHGシリーズだ。また右側に傾いたポージングの綾は、まさしく劇中のチャンドラーそのもののイメージである。同弾にアソートされたレッドキングと組ませられることが、素直に嬉しい。
夏草や 兵どもが 夢の跡 –松尾芭蕉-
激闘の残滓。勝者である怪獣王が猛り、その足許に惨めにも打ち棄てられた、無謀な噛ませ犬の痕跡。曾ての健勝と溌溂を偲ばせるフリッパー翼の、根元からの捥がれ、つまりは生命の断絶。鮮血は未だ温もれど、嗚呼、我唯一介の塊肉也...。
レッドキングが突っ立つ傍らに、放ったらかしの片羽。即ちそれは「ヤツが居た」証し。こういったアイデンティファイは、チャンドラーならでは。なので高々が残骸について、フィギュアとしての出来如何を云々する事は、烏滸の沙汰と言うものだろう。只管に、哀れな此奴めのレーゾンデートルに思いを馳せ、果敢で向こう見ずな闘犬の傷痍ないし戦没を悼もうではないか。