“ポリストーン”なる当時まだ目新しかった素材による、リアル造型のウルトラ怪獣シリーズ。最初にラインナップされた5体うちのひとつが、このペギラだ。本シリーズでは「ひとつひとつ手塗りによる丁寧な仕上げ」を謳っていたが、これはそれが良い方に作用している。手塗りによる粗野な筆致は、却ってペギラのゴワゴワした険しい皮膚の質感表現には適しており、「悠久の時」さえ感じさせる極洋の住人の姿を、そこに顕現させていると言えよう。白色を擦れさせるように表面塗装した皮膚には、下地に塗られた重厚な緑色やベージュ系の色彩が浮き出ており、何とも言えない深みのある味わいを放っている。またほかには、側面から見たペギラ特有のシルエット、翼のヒダ、身体を覆うフジツボ状の突起物など、随所に丁寧な作りが施されおり、好感が持てる仕上がりだ。難を言えば、ベタ塗りされた口腔内の稚拙表現であろう。突き出た2本の牙の見事さとのギャップが際立ち、唯一惜しまれる点だ。だがそれでもほかにラインナップされた4体(ゴメス・リトラ・ゴロー・ナメゴン)の中では、出色の出来栄えであった。
南氷洋をゆく砕氷船・鷹丸に襲いかかろうとするペギラ。「開田裕治の迫力あるイラストを立体化」。これを標榜した本シリーズはしかし、精緻な作り込みとは裏腹に、弾を重ねるごとに全体のスケールが矮小化の一途をたどっていった。結果、肝腎要の「迫力」が殺がれている。だがペギラのフィギュア自体の出来は良く、造型・彩色ともにこのスケールでは出色だ。また白色系のペギラに対して、前面にオレンジも鮮やかな船を配した構図は、強烈なコントラストを放っている。荒れる氷洋とそそり立つ氷柱も「活きて」おり、だからこそ殺がれた「迫力」が惜しまれるのだ。
1998年に発売されたもののリペイント版。前回のものがベージュ彩色だったのに対し、こちらは色合いに複雑な深みを出そうとした意趣が読み取れる。だが結果的には、厭味ギリギリの黄土色の仕上がりとなった。つくづくペギラの表皮再現の困難さを痛感するものであり、高山良策の神技とも言うべき仕事に改めて敬服させられるであろう。
極洋の厚い氷を突き破って出現したペギラが、今まさに船舶に襲いかからんとしている瞬間を竹谷隆之造型で再現。生物感と躍動感溢れるアレンジは、コンパクトながら「カッコいい」のひと言に尽きる。またこれがグリコのおまけとしたところに、嬉しさもひとしおだ。
頭部だけの怪獣生首フィギュア。その第2弾・ウルトラセブン編のシークレット・アイテムとして、『ウルトラQ』のペギラが登場。これはそのカラー版で、ほかにもモノクロ版がアソートされた。コンセプトとして当たり前のことだが、「顔」の造作再現にのみ拘泥っているだけあって、造型はガレージキットの域。海棲哺乳類特有の張り出した鼻面や、それに伴った口腔内の深さなどは、これくらいのスケールでなければ味わえないような量感に溢れる。また象牙を髣髴とさせる左右一対の歯牙にあっては、尖り具合と反り塩梅に惚れ惚れ、名刀に相対する神妙さに身も引き締まろう。大袈裟だが。しかしこれが首だけのフィギュアなので、背面のマグネットを以って部屋の壁面に設置・掲揚すれば、牙を含んだ形象の見た目も手伝って、猟人自慢の剥製がそこに立ち顕われる。嗚呼、生殺与奪を許されし野生の刃...と言っても、また大袈裟か。さて彩色についてだが。下地の黒ずみ、それに被せたベージュとの絶妙なハーモニーが、ペギラ独特の名状し難い風合いとして見事発色。が過度に鮮烈な赤は、大きく穿たれた口腔内を汚濁するだけで、牙と角における塗装の中途半端さに、折角誂えの三日月も泣いている。これのハイライトは、何を置いても一対の牙。なれば“静謐なる月光のペイル”が、是非とも欲しかったところだ。中途で寸断されてしまった背面の空寒い断崖と併わせて、寂寥感も一入。造型と彩色の不均衡さは、原油高趨勢における時局にも起因か。
昔懐かしいブルマァクのソフビ人形を、ガシャポンサイズで再現。ブルマァク・カラーリング版。ブラウンの成型色はペギラのイメージとは程遠いが、メタリック・ブルーの噴き付けが鮮やかに映える。また安定感のあるどっしりとした下半身やデフォルメされたすっとぼけ顔など、おもちゃとしての味わい深さは懐古趣味を差し引いても愛らしい。