放浪宇宙人  ペガッサ星人




『ウルトラセブン』 第6話
「ダーク・ゾーン」

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『大怪獣シリーズ』 TDF ALIEN FILE
地球防衛軍エイリアンファイル
X-PLUS 2007年


 怪獣リアルフィギュアの傑物・エクスプラスが迷走、痛恨の踏み外し。1999年にブランドを創設。爾後、ガレージキットやポリレジン・スタチューなどを手掛け、2003年発売のソフト・ビニール製ガラモンを皮切りに、20cm前後のスタンダード・スケールを(ほぼ)一貫させ、市場への定常提供で多くの好事家・蒐集家から愛顧されてきた『大怪獣シリーズ』。だが4年目にして真逆の枝分かれ、寄り道、副業、いやいや血迷い。何故このサイズ(14.5cm弱)?そして、どんな事由での台座仕様だったのか?
 バンダイ製食玩不朽の名作『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ(2002年-2008年、エクスプラスも原型製作で2006年より参画)が打ち出した商品概念、即ち「想い出に残るシーンを場景ごと切り取ってジオラマ化、その台座上にリアルな怪獣フィギュア」。このサクセスをして、「何らの影響も受けていない、全くの創意である」などと吐かそうものなら、真偽はどうあれ、千三つの謗りは免れまい。寸丈のスケール・アップを以って精緻さの向上を図り、豪勢な拵えにすることによって名鑑シリーズの高位版的な展開を志向していたのであろうか。いずれにせよ「柳の下に何時も泥鰌は居らぬ」、ファンにしてみれば傍迷惑千万、要らぬ山っ気だ。
 又候“地球防衛軍エイリアンファイル”(イカルス星人も同時ラインナップ)なる銘打ちも、まるで駄目。“毎日新報江戸川事件簿”(エイリアンファイルの姉妹品的意図の下、同時期に同社から並行発売されたもので、ゴメスペギラがリリース)と共々併せて、それらネーミングの何ともまあ安易なあざとさが発露していることか。再思三考、よくよく練り重ねてのことなのだろうが、可惜残念、気が利いているとは到底思えないのである。そも「ファイル」やら「事件簿」などと鼓吹して謳う割りには、紙綴じ仕様・電子形態を問わず、そのような“認容資料”を匂わす趣向やら工夫やらに乏しく、よって大上段に振り上げられたお題目の空寒さと来たら!見事な上っ滑り、このザマ。以後のシリーズ継続に繋がらなかったのも、斯様な中途半端さによるものと端倪出来よう。一気呵成な4種(ペガッサイカルスゴメスペギラ)ものお披露目も、単に虚しいだけの付け元気、兎にも角にも“成っちゃいない”のである。
 だがさんざ痛棒を食らわしたところで、しかすがに、そこはエクスプラス。フィギュア自体の出来栄えにあっては、造型・彩色ともに難癖の付け処がこれと言って先ず見当たらず、落ち着いた賞翫を約束する。腐っても鯛(いや腐ってはいないのだけれど)、流石は怪獣フィギュアの雄だ。コンセプトの不体裁・不首尾は扠措き、「肝腎のペガッサ星人が良く出来ているのなら...」と、躊躇していた食指も動かされよう。英邁な天眼通は己が超科学と共に在り、泰然自若として飽くまでも紳士だったお喋り者の姿。その生き写しが、13.5cm×7cmの矩形上に佇立。正確無比な稜線で切り出される全体像から、身体随所に突起するフジツボ状の細工が如き瑣末まで、適正な色遣いと丁寧な塗装を含めて、冷罵許さぬ隙の無さはもう見ての通りだ。ここで逐一それら傑出点を挙げ連ね、どう優れているかを態々縷陳するものでもなかろう。実際物に比して何ら遜色無いペガッサ星人が、「其処に在る」というだけで最早十全なのである。
 しかし一方で、斯様に熟達した技芸にあっては、「ソツが無い」故に没個性を発現させてしまいがちだ。当ペガッサ星人も、その陥穽の中。「良く出来ている」のは精査を俟たず、反駁の余地無し、されどこの味気無さ...。所謂“手練れ”から来る無味乾燥を、愛好の徒輩がそう易々と看過出来ようか。売れっ子画家を宮廷に留める第一条件は、何は措いても先ずは「似せる」力量だ。そう、このペガッサ星人に付けられた「良く出来ている」という月並みな採点の正体は、取り敢えずは合格ラインに達した写実的近似性にほかならない。模像製作に対する姿勢として、果たしてそのような実直さは正しく、いや寧ろ本懐で、憂慮すべきものでもないのだろう。生真面目であるが為に、機微の失墜。真っ正直が故の、及第点留まり。「姿勢」に背叛する「結果」とは詰まる処、模造従事に汲々とするあまり、作り手が陥る“思考停止”に由来する。フィギュア製作に纏わるこういったディレンマこそは、向後本腰据えて取り組まれるべき両刀論法であろう。
 さてそれでは、以上のような「よく似ている」ペガッサ星人の優位点は、ここでは特に触れず。ケチ付け・毒突きついで、この際難点を総浚え、店卸しに終始してみようかと思う。
台座。小スケール物(名鑑シリーズ)ならいざ知らず、ある程度嵩の有る物について言及するならば、エクスプラスにとっての場景台座は、どうやら鬼門らしい。殊にスタチュー物など、高額商品にそれは顕著だ。不得手なのか?爆弾投下の余勢で損壊・捻転、歪んだ土瀝青の地表に拗くれる縁石やらマンホール蓋やら。ただそれらイングリーデンツの幾つかを体よく配い、しかし其処から何らの感慨すら得られぬ形式的区画。この砂噛むよな詰まらなさは、“場”景フィギュアの“情”を大いに殺ぐものであり、最早致命傷の域。単にフィギュアの安定佇立を企図としたのなら、寧ろ無装飾の矩形でケッコ。鈍らで俄か拵え、実の伴わない功名心など、所詮は要らぬ山っ気だ。
胸部光輝面における黒ドット。スタッピング印刷なのだろうか?橘系橙黄色に彩色されたハート型の、主にエッジを囲繞する形で集中的に点在する黒点群。まるで工業生産品であるかのように、それら規格化された点々の一様なこと。ドットの疎密にあっては、或いは実物に忠実なのかも知れぬが、蟻の蝟集を髣髴とさせる黒の際やかさには閉口、どうにも喰えない。矢鱈と厭味。テレビ・アニメーション作品『侍ジャイアンツ』(1973年-1974年)に登場した長島茂雄、その頬と顎における鬚髯の剃り痕、所謂“青ジョリ”を見るようだ。然もそれでいて生物らしからぬ、黒点打刻の機械的瞭然な様。これがエンブレム宜しく、中央も中央、真っ芯に鎮座ましているのだから厄介。
身構え、ポージング。右腕を掲揚、対して左腕は下垂させ、岩石か何か巨大物を抱えるが如き所作と、そして引っ掴むよな十指の綾。下肢両脚は左方へ流れ、遵って身体は心持ち右方へ傾斜。重心は何処?具体的でもあり、特に「何かしている」という訳でもない不可解な挙止である。奇異なモーション、その写生に、まさか懐古の情を喚起される筈も無く。縦し仮令斯様な一瞬が実際のフィルム作品内にあったとしても、これを切り取るセンスがまるで慮外で理解し難い。他社製品との差別化を図った腹積もりなのか?「奇を衒う」ことは、即ち“馴染み”からの逸脱だ。敢行にあたっては、人心の間隙を衝く余程の才覚を持ち合わせなければ、無用の長物に堕すのである。
 さて“愛すべき”怪獣フィギュアについて、以上のような誹毀・讒謗・痛罵の陳列、扱き下ろしの数々は、是れ不本意で心ならずも。しかし“あの”エクスプラスだからこそ、敢えて越つ度の方に鉾先を向けてみた。エクスプラスはこんなものではない、エクスプラスならもっともっと...という、半ば狂信をして、だがしかしそのような毒吐きに使嗾されたのは、並べて好きなればこそ。「良質な怪獣フィギュアを(安価で)」と、アパレル会社から独自に立ち上げた営業第4チームの気骨、弥増せよ!なんて、せめて心の中では。

『大怪獣シリーズ』 TDF ALIEN FILE 地球防衛軍エイリアンファイル_ペガッサ星人_前・後

『大怪獣シリーズ』 TDF ALIEN FILE 地球防衛軍エイリアンファイル_ペガッサ星人_側・俯瞰

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ ウルトラセブン編 1_ペガッサ星人_前・後

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ ウルトラセブン編 1_ペガッサ星人_アップ・側

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ
ウルトラセブン編 1
バンダイ 2003年


 「地球はもうおしまいだ お前らすぐ地球から逃げるんだ –(中略)- 悲しいことだ しかし私は地球を爆破する」その揚言と共に、超科学を誇るトーカティヴな“ダーク・ゾーン”の主は、漸やっと得体を顕わし...。『ウルトラセブン』の傑作にも挙げられる第6話「ダーク・ゾーン」、アンヌの個室における“あの”名シーンを立体化。「日常」を表徴する営為空間にぽつねんと異形を佇立させることによって、『ウルトラセブン』という優れたSF作品で描かれる「隣り合わせの非日常」を、僅か5cm四方のミニアチュール台座上に顕現・完遂させてのけた快心の出来だ。見事。ステキ。見知らぬ来訪者の闖入によって、安寧なオートモスフィアーは紊乱され、椅子やら机やら花瓶やら、平素見慣れたそれら調度が、取り巻く気色ごと歪むのである。その具足の配置や切り取り方も錐脱しており、殊に方形を成す安置台にあって、だが決して四辺の平行線には準拠せず、敢えて「斜」方向の区画として設えたセンスに、『名鑑』シリーズの気品すら窺えよう。中途で寸断されたソファー椅子やデスクの不安な居住まいは、星人が佇む歪な場景をそのまま象徴している。実際のフィルム作品を観れば、アンヌの文机にあって、デザインと形状の再現が如何に的確であるかが判るだろう。平身低頭。「君らが我々の科学に近付いた」傍証としてのアイテム、即ち造花の配いも、当然の如く外さないこところが心憎いではないか...。さてこの異空間の発振源たるペガッサ星人、その立像だが。両腕を掲揚気味に、そしてやや後方へ仰け反ったポージングは、スチールなどで御馴染みのもの。異者としてのケレン臭芬々だが、これと対照的に沈着した下肢と併わせ見れば、「紳士」を終始貫徹した身の熟しに得心がゆこう。模像の為のオブスキュア性、その全うである。饒舌ながら沈思黙考を忍ばせる面差し、正面から側面に向かって変容する頭部形状の移ろい、意想外にも丸みを帯びた後頭部、フィッシャーマンズ・セーターを髣髴とさせる縄状ケーブル編みの疎密と厚ぼったさ、下膊と腰部を囲繞するフリンジの律儀、下肢側面に打刻されたスタッド堵列のパンク・ロッカー的風合い、そして頭頂から踵を滑走する緩やかなバック・リッヂと。確かなアウト・カーヴィングに確かなディテールが乗っかる心地好さは、是れつまりエクステリアとインテリアの成就だ。既述の台座造作と併わせて、当該サイズ物の“デスクトップ・ジオラマ”としては、“名シリーズ”と謳われる中にあって、別けても過ぎるくらいの名品と言えよう。誂え向き。持って来い。そうまさに「掌上に繰り広げられる“あのシーン”」には、打って付けの拵えなのである。心ゆくまでの賞翫を以って瞑すべし。

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ ウルトラセブン編 プレミアムエディション_ペガッサ星人_前・後

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ ウルトラセブン編 プレミアムエディション_ペガッサ星人_ライトアップ・比較

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ
ウルトラセブン編 プレミアムエディション
バンダイ 2006年


 上記2003年版の、これはその別途仕立て。フィギュアの原型自体はそのまま、但しクリアー素材での成型となっている。胸の光輝部をクリアーイエローで塗装し、ペガッサ星人独特の“あの発光”に肉迫せんとする試みだ。背面は極力肉薄に塗装されており、これを以って光の入射口としている。無論自ら発光する仕掛けは無いので、後部若しくは下部より人為的に光源を据えなければ、決して「光る」ことはない代物。よって作為無き光の下で2003年版の物と並べたとき、意趣を凝らした筈の胸部に、如何ともし難い「くすみ」が発露しよう。だがひとたび受光に与れば、劇中さながらの光彩を放つ。これが暗中では尚一層。それは脂肪光沢著しい樹脂や琥珀、そう甘露の煌き!物語のクライマックス、夜の街でダンと対峙した超越者の、人心を眩惑・陥穽させるよなあの灯し火。まさにそれ!尤もこのように「夜の屋外」なればこそ、「光るペガッサ星人」が初めて活きるというもの。なので何らの仕様変更も無く(タイトル文字のみシール貼付)、アンヌの部屋を模した台座では、この“光輝ヴァージョン”とも言うべき立像の“映え”は十全ではない。光源の特殊条件下を以って、漸く真価・本然を発現する当該アイテム。同シリーズにおける一連の陣容の中にあって、成る程“プレミアム”たる所以だ。尚クリアー成型に準じ、些か彩色の改変もあったことを附記しておく。特に頭部におけるブラックからダークグリーンへの更改。而してこれもまた「らしさ」を発色、蠱惑収攬な光輝と併わせて、つくづく“ペガッサ・カラー”の不可思議さを思い知るのである。

『HGウルトラマン』シリーズ
PART.18 超時空の大決戦編
バンダイ 1999年


 HG18段目にしてペガッサ星人登場。このほかウルトラセブンをはじめ、ユートムクレージーゴンと、全6種中4種が『セブン』物に偏重した、まさにセブン贔屓な面子・陣容。(因みに他2種は当時の劇場公開に合わせて、『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』よりウルトラマンガイアのスプリーム・ヴァージョンとキング・オブ・モンス)|HGウルトラもいよいよ黄熟を迎えた時期にあって、造型・彩色ともに、いずれのラインナップも安心して見ていられる出来映えと相成った。無論このペガッサ星人も、そう。この4年後の商品である上記名鑑版の物と天秤掛けすれば、些かの見劣りは正直否めないが、それでも99年往時、当該スケールのペガッサ物として、これが尤物であったことは言を俟たない。「ソツ無し」。しかしこういった手練れは、ともすれば先入観故の見落としを生じかねない。それは彩色の不充分(頭部白ラインの不完全囲繞や下肢側面鋲打ちの塗装省略、躯体ホワイト部のベタ塗り)など、工程上の端折りを指摘するものでは勿論なく、そもそもの形作り、「らしさ」のアウト・カーヴィングにおいて発露するのである。例えば、実物では意想外に丸みを帯びる後頭部。そのシェイプに対して、尖頭を以って此れ是とした造型処理。この先細りを頂点とする頭部シルエットは、遵ってあからさまに二等辺三角形を描き出し、更にこれに準ずる体躯は、下肢に向かって逆三角形となるのである。結果、ペガッサにしてはゆき過ぎた肩の恰幅。どことなく扁平に錯視しがちな胸板は、概ねこれに由来する。偏に作り手の強い思い込み、即ち「ペガッサ星人は三角形構成」という固定観念より生じた斜視・僻目、その現出であろう。而して「意外にも...」という、実は模像製作にあって肝腎なオブスキュア性が、するっと看過されてしまうのだ。だが「形骸」にも堕し兼ねないところを、それでも上乗の品に伸し上げたのは、ほかならない“HG”が謳うハイ・グレェードなクオリティ、その矜恃なのだろう。きっと。

『HGウルトラマン』シリーズ PART.18 超時空の大決戦編_ペガッサ星人_前・後

『HGウルトラマン』シリーズ PART.18 超時空の大決戦編_ペガッサ星人_アップ・側

600円ソフビ 『ウルトラ怪獣』シリーズ_ペガッサ星人

600円ソフビ 『ウルトラ怪獣』シリーズ
No.28
バンダイ 1986年-2000年期仕様

   (※1983年初版時は N0.16 で別途カラーリング)



 15年以上の長きに亘り、バンダイのスタンダード商品の定番として登用・陣立てされ、玩具店店内の定位置を占拠、多くの子どもたちから愛玩された(であろう)ペガッサ星人だ。角張らず丸みを帯びた造型は、動もすれば野暮ったくもあり、だが元来のシャープさを削げ落とすことで、怜悧な達観者をして、こんなにも親昵させる可惜何たる妙味。“ソフビ”という、暖か味ある材質だからこそ為遂せる術だ。質素なブラック&ホワイトに紅一点、蜜柑の果皮を貼っ付けたよなオレンジの、何とチープな発色であることか。勿論これは歎賞であって、略された背面塗装の寂寞感も含めて、時代の体現者である“おもちゃ”として、実に味わい深いのである。造型はリアリティの追及には程遠いものの、安易にレトロ調ないし簡素化に堕することなく、例えば思慮深き眼の表情や、例えば身体随所における吸盤状突起物の堵列など、其処此処に作り手の真摯な姿勢が窺えよう。そしてまた、ゴム長の如き足のラヴリー&キュート!先駆者としてどんなに尊大に振舞おうとも、この愛狂おしい利発者は、飼い馴らされたペット宜しく、良いように己が掌中に納まるのである。

『ウルトラセブン Bot-Biz』 Part.2_ペガッサ星人_前・アップ

『ウルトラセブン Bot-Biz』 Part.2
ラナ 2002年


 ボトルキャップ・サイズのフィギュアには、無論向き不向きがあって、特にウルトラ怪獣など繊細なディテールが「物を言う」ような対象にあっては、彩色も含めて必定無理が生じよう。それでもこれを「何とか」ペガッサ星人ならしめようとした粒粒辛苦の痕跡は、まあ見てのとおり。その粘り強さは買う。殊に顔部を囲繞する幾条の白ライン。何この絶技!(敬意を払って)莫迦でしょ?だが前面に押し出されているのは泥臭い骨折りだけで、よってスマートさが著しく欠如、これは最早模像製作にとって深手・致命傷以外の何物でもない。つまり苦役の強制。そこには低賃金と引き替えに塗装作業に就労した者たちを、恐らくは懊悩させた残酷な指示さえ窺えよう。使役者の非情な搾取である。また粗悪ないし脆弱な材質故か、如何ともし難い形状の不安定さは、特に突き出た眼の部分に発露。このへたり...。恨みがましき眼つきは、或いは彼ら不遇な職工たちの怨嗟にも繋がるのである。桑原桑原。

『円谷倉庫』_ペガッサ市

『円谷倉庫』
バンダイ 2008年


 “1970年のこんにちは”。「人類の未来と調和」を謳った大阪万博。千里丘陵の会場に営造された、奇天烈でユーモラスなパヴィリオンの数々。『セブン』放映はその3年前。来るべき近々未来の予見が、例えばヴィラ星人の宇宙船団であったり、宇宙空間都市ペガッサであったり...。“怪獣倉庫”の通り名で知られた、円谷プロが擁する保管貯蔵庫。そこに眠る撮影用備品・プロップのあれやこれやをミニアチュール化、全国の玩具店やコンビニエンス・ストアーにて販売してしまおうと言うのだから、何たる暴挙断行、あらステキ。で、このテクノ・ユートピア風なペガッサ市。ラインナップへの抽抜には欣喜雀躍なのだが、飽くまでも同梱の“宇宙ステーションV3”が主役であり、宇宙都市の方は嵩合わせの為のほんの“添え物”程度に過ぎない。独楽型の居住営為部分(?)が四戸と、それらを連結する通路パーツ(?)が、水平状態と傾斜状態の2種形状で各三基ずつと、組んでみれば過疎も過疎、てんでボリューム無し。もし劇中イメージに近似させようとするのなら、果たして幾セット必要なのか...途方に暮れるのである。相当な分量で初めて活況する天空都市ペガッサ。なればこの安普請なプラスチックの小片に附された代価、即ち500円+消費税はフザケの窮み、全く以って見合っていないように思えるのだが...。

『円谷倉庫』_ペガッサ市



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