間違いなくビラ星人フィギュアの最高峰。“宇宙エビ人間”の醜怪極まる姿が、30cmスケールで顕現。緩やかなS字を描く蛇腹状の体躯には、隆起した松毬状の節が連なっており、丁寧に作られた一枚一枚に作り手(原型:高垣利信氏)の魂が籠もっている。その夥しいレイヤードをして、劇中さながらのビラ星人の躍動を首肯せしむるのだ。まさに造型家冥利に尽きよう。奸計を弄する悪役ながらどこか飄然とした表情は、まさしくビラ星人のものだ。顔の外輪に向かって放射状に走る幾条の筋や、扁平な顔に派生する微妙なうねりなど、どこをとってもビラ星人顕現に余念がない。橙色や朱色を基調とした彩色も申し分なく、また随所に見られる苔生したような汚れは、甲殻類の生物感として極めてリアルだ。顔の触手や尾部の脚の質感も、まさに節足動物のそれであり、ビラ星人を作る前に、先ずエビなどの甲殻類を研究したと思しき作り手の執念さえ感じられる。難を言えば、形式的な木々が四角く取り囲む台座の形骸化だ。だがそれでも他を寄せ付けない独走振りは、決して色褪せることがない。
この時期のHG技術では、ここまでが精一杯か。名鑑シリーズ同様、脚が太く長過ぎる。全体の造型はまあいいものの、顔部分の彩色における2色構成にもっとメリハリをつけてほしかった。だが細かな顔の筋や蛇腹表現など、真摯に再現されている。その形状故に自立困難なビラ星人には、専用の足台が付属した。