カプセル怪獣  ミクラス




第3話 「湖のひみつ」
第25話 「零下140度の対決」

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『究極大怪獣 ULTIMATE MONSTERS』
シリーズ Final
バンダイ 2009年


 真ん丸魚眼と扇情的な口唇、半開きの口腔から漏れる空隙きの歯列。しどけなく頓狂な面相を囲繞する、彩り豊かなホルンの突き立て、ヴァンダイク・カラーの如き襞襟の包囲、葉状の前垂れと。古代インカ文明の仮面装飾か、はたまたバリ・ヒンドゥーの聖獣バロンか。いずれにせよ、このプリミティヴ!斯様な顔貌に付き倣う体躯はバイソン。後方へ過剰に張り出したハッチバック、だがしかし二足立脚という意想外性はミノタウロス、くだん。原始美術と野牛と、そして神話とがハイブリッド!以上のような美辞麗句は、そのままこの“究極”版ミクラスにも当該しよう。先ずは、その豪壮っぷりを篤と賞翫あれ。

 「着ぐるみ感にまで拘った造型は、それこそスーツ随所の皺寄り・弛みまでをも再現!」なんて手味噌自慢、声高に謳い揚げた本シリーズ。第6弾にして漸うの幕引きと相成った。前弾、つまり第5弾で抽抜されたウインダムが、同じカプセル怪獣として先んじ、「じゃあミクラスは?アギラは?」と大旱の雲霓、隔靴掻痒した諸兄も必定少なからず。よってこの健気な弾丸ファイターの“究極大怪獣”への陣容参画、終幕におけるぎりぎりの滑り込みは、してみればまあ幸甚の到りであろうか。(アギラは未登板、可惜残念)

 さて“アルティメット”を戴冠するミクラス。既述したように劇中イメージそのものが、そっくり当て嵌まるという見事な拵えである。バッファローを体現する特異な稜線、隆起と陥没が織り成すリッヂ・ライン。無双の膂力を発露する腕の骨太と、ポージングによって派生するスーツの緩と急、即ちシワ。武骨面における造作の的確さ、猛牛の如き露わな鼻孔、嚇怒調に盛り上がった眉宇、婀娜さえ放つ丸目玉と分厚なリップ、これぞまさにインカの仮面!取り巻くデコレーション、つまり角・鬣・前掛けが意気揚々と溌剌。短くも屈強な脚構えは万鈞な過重を支え、祭典・盛事で活況する上体を安定させる屋台骨として作用しよう。長大な2本のホルンも、このスケールであるからこそ、紆余・ぬたくりの勇躍が映えて活きるというもの。雄大な背面に刻印された碑文と、葉状の前垂れを走る葉脈が脈々。恰も樹幹に腐生した茸の如く、脚部外側面を覆う笠状の突起物、その不規則な羅列など。このように放胆と巧緻が織り成す調和を以ってして、忠義尽くす角獣の模像は漸う完遂を見るのである。

 そして「野牛の模り」を息衝かせる仕上げ、つまり塗装彩色。成型色であるブラウンの上っ面に、サッと刷けたカーキが身体随所の突出部に引っ掛かり、独特なワイルド感を発現。更にその上に置かれたボルドーの点在が、アクセントとして効果的に発色、意外性の演出と共に全体像をグッと引き締めている。肉色一色による口腔内の深みの欠如や、また角にあっては乏しき色味など、少々の難も目に留まるが、概してこれらが“究極版ミクラス”の出来栄えをそう阻害するものでもなかろう。「最優良」の判押しとまではゆかぬが、色彩設計の蹉跌らしい蹉跌は何ら認められず、よって無難な為遂せ、「及第」といったところか。

 ところで実際のスーツの背面には、務歯の噛み合いを掩蔽する為に、“蓋閉じ”が為されている。そういったファン心理を擽るような事象を汲んでの事であろう。この“アルモン”版ミクラスも、背面の“蓋”がパカッと外れるべく分割成型されているのだ。何となれば、愛すればこそ。斯様な隠れた配慮の発見にあって、又候この忠犬への愛着が一入増すというものであろう。

 縷陳の最後、口の端に掛けて置きたいのは、この二足立脚バッファローをして、生命漲らせる躍動感だ。と言っても無論これはフィックス・フィギュアであって、身体髪膚のいずれも駆動するものではない。要は刹那における活写、瞬間を捉えたハンターの眼差し、即ち造型者の彫塑センスである。それは殊に腕部に発露。上段構えに掲揚した左腕と、脇を締め屈曲させることで中段構えとなった右腕。この斜の対比で生じたズレは、スーツ余剰分の偏りを左右で違えることとなる。つまり左腕内側面にあっては著しくダブつき、そして右腕外側面にあっては指先に牽引されるという緩急の差異。矯めつ眇めつすれば、成る程疎略な模刻として目に映じるやもしれぬ。粗雑な彫り目...。しかし寧ろこういった荒削りな彫琢による流線こそが、実はミクラスのオブスキュア性、つまり「らしさ」の顕現に大きく加担しているように思えてならない。斯くもよく模造された面差しや、忠実にシルエットを準えた稜線とか。ここに生動の綾が加わることで、漸うやっと「模り」は成就するものではなかろうか?このミクラスのように。


『HGウルトラマン』シリーズ
怪獣ベストセレクション
LOT : 凹 3
バンダイ 2002年


 1997年に出たもののリペイント版。全体的に濃い目のブラウンに変更、角の彩色に緑色とピンク色が追加され、ぐっと良くなった。体表の汚し塗装も白から黒になり、深みが増し引き締まったこのミクラスは、造型・彩色ともにカプセルトイ・サイズではマストだ。


『HGウルトラマン』シリーズ PART 12
遊星から来た兄弟編
LOT : 凹 4
バンダイ 1997年


 HGシリーズ第2弾のエレキング初出から2年、ミクラス漸くの登場で「吾妻湖対決」が揃い踏みだ。造型は良いものの色味に乏しいこのミクラスだが、5年後のリペイント版にて完全なものとなった。エレキングも2002年に造型が刷新され、「吾妻湖コンビ」は更に充実してゆく。

『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ
ウルトラセブン編 史上最大の侵略
バンダイ 2004年


 膝下を取り外して、湖に浸かっている場面にもできるコンパーチブル式。手前に樹木を配してミクラスの巨大さを表現しているが、その樹木自体の作りがあまりにも形式的なので、ミクラスのインカ風仮面の顔と相俟って、それこそ民芸品に見えてしまう。顔の作りもちょっと大きくSD風にも見えてしまうが、ミクラスの鬼気迫る突進がこの小さい世界の中に顕現しているのは確かだ。


『ウルトラ怪獣名鑑』シリーズ
ウルトラセブン編 プレミアムエディション
バンダイ 2006年


 原型は2004年に出たものと全く同じで、クリア素材による成型と渦巻き状に部分を塗り残すことで、ミクラス出現時をイメージした。この意匠は、同弾にアソートされたウインダムが、カプセル怪獣としてはいちばん効果的である。が、ミクラスウインダムも、劇中において渦巻き状の光に包まれての登場は無い。


『ワンダーカプセル ウルトラマン』
シリーズ第1弾
バンダイ 2002年


 HGシリーズより断然小さいサイズにも関わらず、角に施されたこの彩色には驚嘆!造型も申し分なく、またこのムスッとした顔つきが何ともかわいらしい。


『桑田二郎マンガ版ウルトラセブン
ウルトラコレクションフィギュア』
シリーズ
マーミット


 大きな方の角が顔の脇から外側に向かって生えていることと、手足に見られる黒いツメが、実際のミクラスとは異なる解釈だ。しかし彩色はミクラスそのもの。全体的に乾いた感じの塗装だが、角も細かく塗られていて、バンダイのソフビよりは断然好感が持てる。


700円ソフビ『ウルトラ怪獣』シリーズ
バンダイ


 葉っぱ状の前掛けがご丁寧にも緑色に塗装されているのは、ブルマァク人形と同じだ。劇中では、前掛けは体色と同じ茶色である。造型自体にそんなに破綻はないものの、難はこの薄いブラウンによる彩色だ。リペイント前(600円時代)の方の濃いブラウンの方が、まだイメージとしては近かった。


『HGブルマァク魂』シリーズ 3
バンダイ 2002年


 懐かしいブルマァク人形のカプセルトイ化。このミクラスはマルサン1期カラーリングで、昭和当時に買ってもらえた数少ないブルマァク人形のひとつだ。前掛けの葉っぱが緑色に塗られていたせいか、ずっとそこは緑色だと思い込んでいた。今見ても造型に破綻が無く、確かにミクラスである。


『HG真ブルマァク魂』シリーズ 2
バンダイ 2003年


 カプセルトイからシフトして、箱詰め、ヘッダー付きビニール袋入りの体裁となった。ブルマァク珍色カラーリングのカラーバリエーション。体色のブラウンが薄くなって、ミクラスの重厚なイメージを損なっている。


食玩
詳細失念
バンダイ


 非常に気合が入ってて、やる気まんまんといった体のミクラスだ。気骨を感じる。角は先っぽだけ塗られているだけでも良しとしよう。クチビルはピンクだし。


『ウルトラマン F・Bコレクション』
シリーズ PART.2
バンダイ1995年


 SDスタイルでフルカラー塗装が、セールスポイントだったこのシリーズ。細かいモールドと塗装は、当時としては良く出来ていた。しかしこの円柱状のミクラスは、殆んどトーテムポールである。「プリミティヴ・アート」から着想されたミクラスが、また土着民芸術に還ってゆくようだ。


『ウルトラセブン Bot-Biz』
PART.2
ラナ 2002年


 造型とともに細かい彩色などは、ボトルキャップ・サイズのミクラスとしては満足の出来。出来ればもっと量感がほしかったところだ。前弾のウルトラマン編からは、格段の進歩を遂げたと言えよう。



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